日本映画史上最もスッキリする結末は? 痛快なラスト(2)誘拐された82歳が警察を翻弄…圧巻の“逆転劇”は?

text by 阿部早苗

裏切り、挫折、不条理――そんな現実に打ちのめされる日々の中で、爽快な逆転劇や、努力が実を結ぶ瞬間を描いた映画を観ると、不思議と心が軽くなる。今回は、そんな爽快なラストを迎える、スカッとする日本映画を5本セレクト。笑って泣いて、最後には胸のつかえが吹き飛ぶような快感をくれる傑作を紹介する。第2回。※映画のクライマックスについて言及があります。未見の方はご留意ください。(文・阿部早苗)

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チンピラ3人組を翻弄する最強ヒロイン

『大誘拐 RAINBOW KIDS』(1991)

緒形拳
緒形拳【Getty Images】

監督:岡本喜八
キャスト:風間トオル、緒方拳、北林谷栄

【作品内容】

夏のある朝、大阪刑務所から出所したばかりの健次(風間トオル)は、仲間とともに一攫千金を狙い、紀州の山林王・柳川とし子(北林谷栄)の誘拐を計画する。計画に消極的な仲間も巻き込み、彼らは実行に移すが、思わぬ事態が発生する。人質となったとし子は一筋縄ではいかない強者だった。

和歌山県警の井狩本部長(緒形拳)の名を出すなど、予想外の冷静さと狡猾さで、逆に犯人たちを翻弄していく。いつしか事件の主導権は誘拐犯ではなく、誘拐されたはずのとし子の手に…。

【注目ポイント】

 本作『大誘拐 RAINBOW KIDS』は、誘拐事件を題材にしながらも、固定観念を覆すユニークな視点と展開が魅力の痛快コメディ。1991年の公開当時から現在に至るまで、根強い人気を誇る傑作だ。

 誘拐されたのは、関西財界に君臨する柳川家の老女当主・とし子。しかしこの老婆、常識外れの“最強の人質”だった。犯人たちが要求した身代金5千万円に対し、「私はそんな安うはないわ」と怒り、まさかの値上げ交渉を開始。その瞬間から物語は一気にとし子の主導へと切り替わる。

 物語は次第に、「誘拐犯 vs 被害者」ではなく「柳川とし子 vs 和歌山県警」という構図に変貌。とし子は緻密な計略とカリスマ性でマスコミと警察を巻き込み、事件をコントロールしていく。巧みに組み立てられた“逆転劇”は、見る者に爽快感と驚きを与える。

 特筆すべきは、終盤で明かされる真の計画と結末。その鮮やかなどんでん返しに、ただのコメディでは終わらせない深みを与えている。シリアスな題材を笑いと感動で包み込み、最終的には“人間讃歌”として心に残る一作だ。

 この作品の主役は間違いなく、誘拐された老婆・とし子。北林谷栄が演じるとし子の強さ、知恵、温かさに、誰もが魅了されることだろう。事件ものにして人生賛歌。観終わったあと、きっと誰もが彼女に惚れ込むはずだ。

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【了】

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