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「親目線で爆泣き…!」漫画家・丘上あいが選ぶ”心の映画”(5)。「タイトルが死ぬほど秀逸だと思うんです!」

text by ZAKKY
映画『ライフ・イズ・ビューティフル』の劇中写真【Getty Images】

各界で活躍する著名人に「人生に影響を与えた映画」をセレクトしてもらい、その魅力を語ってもらうインタビュー企画。今回登場するのは、漫画家の丘上あいさん。2017年より講談社と『まんが王国』との共同プロジェクトとして連載された『ギルティ ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』はテレビドラマ化を果たすなど話題に。そんな数々のヒット作を生み出してきた一児の母でもある彼女に、その半生における様々なポイントで心を焦がされた映画を5本紹介してもらった。今回は第5回。(文・ZAKKY)

●「自分の子育てにも役立ちました」戦争映画の傑作にして珠玉の親子モノ

『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997)


出典:Amazon

上映時間:117分
製作国:イタリア
監督:ロベルト・ベニーニ
脚本:ヴィンチェンツォ・チェラーミ、ロベルト・ベニーニ
キャスト:ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、ホルスト・ブッフホルツ

【作品紹介】

第二次世界大戦前夜の1939年。ユダヤ系イタリア人のグイドは、叔父を頼りに友人と共に北イタリアの田舎町にやってきた。陽気な性格の彼は小学校の教師ドーラに一目惚れし、猛アタックの末、駆落ち同然で結婚。愛息ジョズエが誕生する。程なくして、ナチス・ドイツによるユダヤ人への迫害行為が行われる。北イタリアに駐留してきた3人は強制収容所に送られてしまうのだが…。

―――最後は、ロベルト・ベニーニ監督による、不朽の名作ですね。

「この作品も自分の子供が小さい頃に観直したのですが、親目線で爆泣きしました。とにかく、ジョズエの父親・グイドの陽気でいじらしい姿に、どれだけ胸を絞めつけられたことか…。当時の悲惨な状況下において、最後の最後まで息子に『大丈夫』だよと言い聞かせて、泣かないように明るく振舞う姿に、心を打たれましたね」

―――すごくわかります。

「奥さん(ドーラ)と結婚する経緯もいいんですよね。あと、グイドは息子を喜ばせるために、現在の悲惨な状況はゲームであって、『1000ポイント溜まったら優勝なんだよ』と嘘をつくわけです。こんなにやさしい嘘はないなと、ものすごく思うんですよ。それで思い出したエピソードがあります。私の場合、平和な日常生活で実践したものですが、幼い息子に『これからミッションを与える!』なんて言うと、普段は面倒くさがってやらない部屋の片付けを、喜んでやったりするんですよ。グイドの子供に対する接し方は、自分の子育てにも役立ちました」

―――なるほど!
「それとですね、『ライフ・イズ・ビューティフル』というタイトルが死ぬほど秀逸だと思うんです。このタイトルは、子供が父親に向ける“視線”を表わしているではないか、というのが私の見解です。人によってはタイトルだけ見て、朗らかなスト―リ―なのかと思って鑑賞した人も多いはず。でも、蓋を開ければ、戦時下の悲惨な状況が描かれている。でも、そんな中でも、幼い息子から見たら、自分のお父さんの人生はきっと美しく映っていたのではないか…。それが私の『ライフ・イズ・ビューティフル』に対する率直な感想です」

―――(爆泣)また、最後に奥深い見解で、泣かしに…。
「アハハ! いやいや、そんなつもりはないですって。でも、今まで語ったことは、すべて私の心を揺さぶったことを、そのまま伝えただけですよ~」

丘上さんはなぜ毛色がまったく異なる5本の映画を挙げたのか。お話を伺う前は謎であった。しかし、取材を通して点と点がつながるような快感を覚え、「丘上あい劇場、ここにあり!」といった圧巻の語り口に魅了された。今回ご紹介した作品を、彼女の想いを紐解きながら鑑賞してみることで、いつもとは違った味わいが感じられるはずだ。

(文・ZAKKY)

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