「殺人依頼も請け負う…」ネット社会の危険を描いた映画(1)。実在した闇サイトを描く本格サスペンス
昨今、仮想通貨を巡る詐欺や、SNSから事件・トラブルに巻き込まれる人々が増えている。リアルな世界では見せられない欲望がむき出しになるネット上で、加害者は被害者は何を思うのか? 今回は、そんなインターネットの闇を描いた作品を5本セレクトした。明日は我が身としてぜひ役立てていただきたい。今回は第1回。(文・寺島武志)
●殺人依頼も請け負う「闇のAmazon」とは? 「シルクロード事件」を基にした本格サスペンス
『シルクロード.com 史上最大の闇サイト』(2021)
上映時間:117分
製作国:アメリカ
監督:ティラー・ラッセル
脚本:ティラー・ラッセル
キャスト:ニック・ロビンソン、ジェイソン・クラーク、ケイティ・アセルトン、ジミ・シンプソン
【作品内容】
2011年、麻薬売買人のロス・ウルブリヒト(ニック・ロビンソン)によって、接続経路を匿名化するソフトウェア「Tor」を使い、支払いを暗号通貨「ビットコイン」とし、この2つの暗号化技術を組み合わせた闇サイト「シルクロード」が誕生する。
この闇サイトはマリファナ、LSD、ヘロイン、コカインなどの違法ドラッグの販売をはじめ、マルウェア、海賊版コンテンツ、盗まれたアカウントやクレジットカード情報、ハッキング技術なども販売していた。殺人依頼なども引き受けていたとされる。
これらの違法取引を、完全に匿名で行える「シルクロード」は一大ブームを巻き起こして巨大化、1日の売り上げが1億円を超す巨大事業へと発展。「闇のAmazon」とも「ドラッグのeBay」とも呼ばれるほどの存在にまで成長し、社会問題化していく。
【注目ポイント】
同作は、実話である闇サイト「シルクロード事件」を基に、「シルクロード」を創設した実在のウェブサイト運営者・ウルブリヒトとパソコンすら使えないアナログ人間である捜査官リック・ボーデン(ジェイソン・クラーク)の戦いを描いている。
ウルブリヒトは、ハッキングの知識にも精通する自信満々の青年実業家のようでもあるが、実際は飽きっぽい性格で、新たに事業を立ち上げては潰し、その儲け方を正当化するためにリバタリアン(完全自由主義)を標榜する薄っぺらさがある。
しかし、技術を学ぶためには勉強を欠かさない努力家の一面もあり、捜査の手が迫ることに怯える小心者でもある。天才的な大悪党というイメージではなく、ウェブの知識を持った軽薄な青年の暴走といってもいいだろう。
一方、捜査官のボーデンは、逮捕のためなら何でもやるという古いタイプの捜査官であり、サイバー犯罪に対してもアナログ的手法で、この事件に挑んでいる。
捜査を担当するFBI捜査官クリス・ターベル(ジミ・シンプソン)の地道なサイバー捜査によってIPアドレスを特定、リックが「ノブ」を名乗ってウルブリヒトに接触し、殺人依頼をさせるまで追い込むなど、アナログで古い潜入捜査の方法で追い詰めていく。
ウルブリヒトの居場所を特定し、ログイン直後にパソコンを押収する場面など、史実に基づいたシーンがきっちりと押さえられており見応え十分だ。
実際の事件の顛末にも触れよう。2013年、FBIはシルクロードのサーバへのアクセスに成功し、犯罪の証拠を突き止めることに成功。同年10月、同捜査局はサーバを押収し、ウルブリヒトを逮捕。直後、ビットコインは暴落した。
ウルブリヒトは2015年に資金洗浄、コンピュータハッキング、不正身分証明書の不正取引の共謀、麻薬不正取引の共謀で有罪判決を受け、仮釈放なしの終身刑に服している。
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