1980年代最高の洋画は?映画の神に愛された傑作(4)40週間のロングラン上映…映画愛に溢れた不朽の名作

text by 村松健太郎

1980年代、スクリーンには想像を超えた世界が広がり、劇場に足を運ぶことは冒険そのものだった。今よりも限られた技術の中で生まれた作品の数々は、ジャンルを問わず人の心を揺さぶり、“語り継がれる物語”として今なお輝きを放っている。今回は、そんな80年代の空気をまとう名作洋画の魅力を紐解いていく。第4回。(文・村松健太郎)

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『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)

サルバトーレ・カシオ(左)とフィリップ・ノワレ(右)(第42回 カンヌ国際映画祭より)
サルバトーレ・カシオ(左)とフィリップ・ノワレ(右)(第42回 カンヌ国際映画祭より)【Getty Images】

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:フィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、サルヴァトーレ・カシオ、マルコ・レオナルディ、アニェーゼ・ナーノ

【注目ポイント】

 イタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレが手がけた『ニュー・シネマ・パラダイス』は、映画への愛を余すところなく描いたヒューマンドラマである。物語は、中年期を迎えた映画監督が、自身が映画に魅了された少年時代、そして青春期の切ない恋愛を回想していく構成となっている。

 イタリアは映画草創期から映画大国として知られてきた。史劇を皮切りに、1930年代にはローマに映画製作都市「チネチッタ」が建設されるなど、産業基盤が整備されていた。第2次世界大戦後も、マカロニ・ウェスタンやジャッロ(イタリア製ホラー)などのジャンル映画が国際的評価を得ていたが、1980年代に入ると制作数も質も下降線を辿っていた。そんな状況の中で本作が登場し、まさにイタリア映画復興の希望として歓迎されたのである。

 本作は第42回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したのを皮切りに、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、アカデミー外国語映画賞など数多くの賞を受賞。世界的に高い評価を受けた。

 物語は、ローマに住む映画監督サルヴァトーレが、かつての恩師である映写技師アルフレードの死を知るところから始まる。少年時代、“トト”という愛称で呼ばれていたサルヴァトーレは、アルフレードを通じて映画の世界に出会い、心を奪われていった。そして青年時代には、大きな恋を経験する。アルフレードの訃報を機に、彼は自らの原点を静かに振り返っていく。

 なお、日本では銀座のミニシアター「シネスイッチ銀座」にて約40週間に及ぶロングラン上映が行われ、大ヒットを記録した。また劇中には『黄金狂時代』(1925年)、『白雪姫』(1937年)、『駅馬車』(1939年)、『風と共に去りぬ』(1939年)、『ローマの休日』(1953年)といった往年の名作も多数登場する。こうした作品を探しながら観ることも、本作の楽しみ方の1つだ。

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【了】

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