TBS日曜劇場史上もっとも演技が良かった主演俳優は?(2)20年以上無双状態…日本を代表する名作製造機は?

text by 阿部早苗

TBS系「日曜劇場」は、半世紀以上にわたり日本のドラマ文化を牽引してきた看板枠である。家族の絆を描くホームドラマから、社会派サスペンスや壮大なヒューマンドラマに至るまで、常にその時代の空気を映し出してきた。視聴者の心を揺さぶり続けるこの舞台において、複数回の主演を務めた俳優たちは、まさに“日曜劇場の顔”と呼ぶにふさわしい存在である。本稿では、その中から最多主演を誇る5人の俳優を取り上げ、彼らが残した名作とともに、その魅力を振り返る。第2回。(文・阿部早苗)

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木村拓哉

木村拓哉
木村拓哉【Getty Images】

【主な日曜劇場主演作】

『ビューティフルライフ』(2000)『GOOD LUCK!!』(2003)『グランメゾン東京』(2019)

【注目ポイント】

 1990年代から2000年代初頭にかけて主演7作を誇った故・田村正和に並び、あるいはそれを受け継ぐ存在となったのが木村拓哉だ。

 主演作を振り返れば人気俳優という枠を超え、時代の空気を纏った存在であることがよくわかる。木村が日曜劇場で初めて主演を飾ったのは、2000年放送の『ビューティフルライフ』。美容師と車椅子の図書館司書の恋を描いたこのドラマは、最終回で視聴率41.3%を記録し、社会現象にまでなった。

 続く『GOOD LUCK!!』(2003)では、旅客機の副操縦士という役柄を通して、空への憧れと責任のはざまで葛藤する青年を好演。高視聴率を叩き出し、職業ドラマとしても高く評価された。

 その後も『華麗なる一族』(2007)、『南極大陸』(2011)、『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』(2013)などで新境地を切り開き、『A LIFE〜愛しき人〜』(2017)では天才外科医のプライドと人間関係の狭間で揺れ動く姿を繊細に描いた。さらに『グランメゾン東京』では、かつて全てを失ったシェフが再起を図る姿に熱演を注ぎ、再生の物語に新たな説得力をもたらしている。

 木村の作品に共通するのは、主人公が「再生」や「葛藤」と向き合いながら、自分なりの答えを模索する。不器用で傷を抱えた等身大の人物たちが多いといえるだろう。

 田村正和が演じたのが「品格ある大人」だったとすれば、木村拓哉が描いてきたのは「傷つきながらも立ち上がる現代の男」だ。両者のスタイルは異なるが、いずれも日曜劇場という特別な枠にふさわしい、重みと深さを備えた存在であることに変わりはない。

(文・阿部早苗)

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【了】

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