最も医者役が上手かった俳優は? ドラマ史に残る名演(3)役作りが素晴らしい…白衣のカリスマを体現した名優

text by 阿部早苗

医療ドラマにおいて、医者役は作品のリアリティを左右する極めて重要な存在である。専門的な知識を自然に操る説得力や、患者に寄り添う温かさ、さらには極限状態の緊張感を演じ切る力は、俳優の力量にかかっている。数多くの名作の中から「医者役が最も上手かった俳優」5人を厳選。彼らがどのように役を体現し、視聴者の心を揺さぶったのかを詳しく掘り下げて紹介する。第3回。(文:阿部早苗)

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白衣のカリスマを体現

江口洋介『救命病棟24時』(フジテレビ系、1999〜)

俳優の江口洋介
俳優の江口洋介【Getty Images】

 医者役が上手かった俳優としてしばしば挙げられるのがドラマ『救命病棟24時』で進藤一生役を演じた江口洋介だ。

 江口扮する進藤は孤高の天才外科医。冷静沈着で無口、常に患者を最優先に考え、信念を決して曲げない。完璧主義ゆえにスタッフと衝突することもあり、一部からは敬遠されている。その判断で多くの命を救ってきた一方、独断的な行動がトラブルを招いたこともある。しかし、時に厳しい言葉を投げかけながらも、その根底には命を救うという強い信念が貫かれている。
 
 江口の演技が高く評価される理由のひとつが、その徹底した役作りだ。実際に医療現場を見学し、救急医療の現実を肌で感じたうえで、演技にリアリティを注ぎ込んだ。まるで進藤一生という人物が本当に存在しているかのような佇まいは、演技に強い説得力を与えており、実際、第1シリーズから第3シリーズで江口はザテレビジョンドラマアカデミー賞で主演男優賞に輝いている。

 シリーズ全体の平均視聴率は20%を超え、社会的な注目も大きかった。進藤が不在となった第5シーズンでは物足りなさを感じたファンは少なくなく、いささか皮肉な形ではあるが、彼の存在がいかに作品の核だったことを証明することになった。

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【了】

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