作らなきゃよかった…監督本人が失敗作と認めた映画は?(1)「人生最大の失敗だった」作り手が嘆いた問題作は?
映画は成功もあれば失敗もある。中には、巨額の制作費や豪華キャストを揃えながら期待を裏切り、監督自身が「あれは失敗だった」と振り返る作品も少なくない。今回は、製作の舞台裏で監督たちが抱いた苦悩や後悔に注目し、監督本人が“失敗作”と認めた海外映画を5本セレクト。その背景を紐解いていく。第1回。(文・阿部早苗)
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期待を背負った大作リブート
『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』(2017)
監督:アレックス・カーツマン
脚本:デヴィッド・コープ、クリストファー・マッカリー、ディラン・カスマン
キャスト:トム・クルーズ、アナベル・ウォーリス、ソフィア・ブテラ、ジェイク・ジョンソン、コートニー・B・ヴァンス
【作品内容】
中東で古代エジプト文字が刻まれた石棺を発見した米軍のニック(トム・クルーズ)らは輸送中に事故に遭い墜落。石棺は消え、世界を震撼させる恐怖が幕を開ける。
【注目ポイント】
映画の歴史には、監督が胸を張って誇れる作品もあれば、振り返るたびに苦い思いを抱く作品も存在する。2017年公開の『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』は、まさにその象徴だ。ユニバーサルが往年のモンスター映画を現代に蘇らせ、複数作品を同一世界観で展開する「ダーク・ユニバース」シリーズ。その第一弾として制作された本作は、1932年公開の名作『ミイラ誕生』を新たにリブートした作品でもあった。
物語は、現代に蘇った古代エジプトの王女アマネット(ソフィア・ブテラ)と、彼女の呪いに巻き込まれる兵士ニック(トム・クルーズ)の戦いを描くアクション・アドベンチャー。製作費は約1億2,500万ドル(約150億円)にも及び、世界的スターを主演に据えた大作であったが米国内興行収入は約8,000万ドルと伸び悩み、海外市場を含めても評価は厳しかった。
監督のアレックス・カーツマンは、のちにポッドキャストでこの作品を「人生最大の失敗だった」と告白している。多くの関係者が製作に口を出す“多すぎる料理人”状態により、作品の方向性は迷走。さらに、主演のトム・クルーズが基本的に、撮影現場での小さな決定さえも指示していたということで、その結果、物語や演出よりもスター主導の判断が優先され、作品の統一感を損なったとも指摘されている。
それでもカーツマン監督は、この経験が自らのキャリアにおいて「計り知れないほどのギフト」になったと語る。本作を撮るまで自分は監督ではなかった、あの経験が初めて監督としての自覚を与えてくれたと述懐している。
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【了】