吾峠呼世晴は天才…『鬼滅の刃』史上最高の名セリフ(4)弟を「無限の強さ」へと引き上げた、兄から最期の贈り物

text by 小室新一

『鬼滅の刃』は、壮絶な戦いの中で描かれる絆や信念によって多くの読者の心を震わせてきた作品である。特に、登場人物が放つ言葉の数々は、単なる台詞にとどまらず、生きる勇気や希望を与えてくれる力を持つ。本稿では、その中でも涙なしでは語れない名言を5つ取り上げ、それぞれの言葉に込められた想いと背景を掘り下げて紹介する。第4回。※原作のクライマックスに触れています。未見の方はご注意ください。(文・小室新一)

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兄が最期に託した想いが、弟を無限の強さへ導く

時透有一郎「無一郎の無は、無限の「無」なんだ」

『鬼滅の刃』時透無一郎
ufotable公式Instagramより

 霞柱・時透無一郎の運命を大きく変えたのは、双子の兄・有一郎の最期の言葉だった。

 幼い頃、両親を亡くした二人は、互いに支え合うように暮らしていた。しかし、兄の有一郎は弟に対してきつい言葉を投げかけていた。

「無一郎の無は、無能の『無』」
「無一郎の無は、無意味の『無』」

 表向きは冷たく、弟を遠ざけるように見えるその言葉。しかし、その真意は弟を守るための不器用な愛だった。

 やがて二人は鬼に襲われ、有一郎は無一郎をかばって致命傷を負う。瀕死の中、最後の力を振り絞って放ったのが、この一言である。

「無一郎の無は、無限の『無』なんだ。」

 それは、これまでの冷たい言葉とは真逆の、弟への深い信頼と愛情の証だった。口では突き放しながらも、誰よりも無一郎の優しさと無限の可能性を信じていたことを告げる、最期の贈り物だったのだ。

 兄の死後、無一郎は記憶を失ってしまう。しかし、刀鍛冶の里で上弦の伍・玉壺との戦いに挑む中、その記憶がよみがえる。兄の言葉が心の奥で再び灯り、無一郎は本当の自分を取り戻す。そしてその想いは、彼を無限の強さへと導いた。

 有一郎の言葉は、ただの別れの一言ではない。弟の未来を信じ、命をかけて託した“希望”そのものだった。無一郎が見せた真の強さの背後には、兄の不器用で深い愛が確かに生き続けていたのである。

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【了】

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