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「ツッコミどころ満載!?」邦画史上最強のヤンキー映画(3)。”お笑い芸人監督”の才能がプラスにもマイナスにも炸裂

text by ZAKKY
水嶋ヒロGetty Images

1980年代以降、中高生を中心に絶大な支持を集めているヤンキー映画。2021年公開の『東京リベンジャーズ』が同年の実写No.1の興行収入を記録したことも記憶に新しい。バトルものとして楽しめ、“男気”も学べるヤンキー映画だが、一口にヤンキー映画といってもコメディから恋愛まで要素はさまざま。本記事では、1980年代の王道作品から「いや、それはねーだろ!」と思わずツッコみたくなる珍作も含め、5本の映画をセレクトした。(文・ZAKKY)

●品川ヒロシの才能がプラスにもマイナスにも炸裂!?

『ドロップ』(2008)


出典:amazon

上映時間:122分
監督:品川ヒロシ
脚本:品川ヒロシ
キャスト:成宮寛貴、水嶋ヒロ、宮川大輔、坂井真紀、哀川翔

【作品内容】

不良に憧れて私立の中学校から不良のいる公立狛江北中学校に転校した信濃川ヒロシは、転校初日に早速アイドル顔のカリスマ不良・達也とタイマンを張ることになる。しかし、悔いが達者だったヒロシは達也に気に入られ、彼の率いる不良グループへの仲間入りを果たす。

【注目ポイント】

お笑いコンビ・品川庄司の品川祐が、「品川ヒロシ」名義で青春時代の実体験を綴った小説を、自らの監督・脚本で映画化。成宮寛貴と水嶋ヒロがダブル主演であることも含め、公開当時、話題となった。

まず、良かった点を挙げたい。ストップモーションを駆使したアクションシーンは、わかりやすく、率直にかっこいい。また、俳優陣の演技力も光る。特に現在は一線を退いている水嶋ヒロ演じる達也は、カリスマヤンキーとして風格たっぷりである。

そして、改善の余地があるのでは? と思った部分も、監督御本人からのクレームを覚悟で整理してみたい。まず、キャストの演技そのものは素晴らしいのだが、いくらなんでも中学生役をやらせるには、ほぼ全員、無理があるだろう。

芸人仲間をキャスティングする優しさは痛いほどわかる。「たけし軍団」の面々に重要な役柄をあてがう、初期の北野武監督作品からの影響もあるだろう。しかし、どこの世界にレイザーラモンHGのような中学生がいるというのだろうか。

また、「人はそう簡単に死なねぇんだよ」が口癖の達也は平気でバイクで人を跳ねたりする。いや、死ぬだろ、そんなことしたら! ヤンキー映画たるもの、そのような卑劣な行為をカッコよく描写するべきではない。というのが、筆者の考えだ。

また、主人公・信濃川ヒロシがイマイチ魅力に乏しい。口の上手さだけで不良の世界で伸し上った品川監督の実体験が元ネタなわけであるが、リアリティーこそあれ、観ていて感情移入がしにくいキャラクターとなっているのだ。

ただし、映画全体のテンポや構成は、さすがお笑い芸人として言うべきか、抜群に良い。特にオープニングシーンの演出のセンスは、冴えわたっている。あれこれと不満点を述べたが、一見の価値のある作品であると、最後に言い添えておこう。

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