巨額赤字で大爆死! 史上最低の大コケ日本映画(2)。悪名高き珍作、観客ポカン…15億円の大損害
名作と呼ばれる映画は、人々の心に刻まれ、愛され続ける。映画を製作した者にとってはこの上ない喜びであり、目指すところでもある。だが、映画も商売であり、興行収入が製作費を上回らない限り、その映画は“失敗作”になってしまう。今回は「製作費◯◯万円!」と銘打ったものの、大爆死…。今回は、そんな残念な日本映画を紹介したい。今回は第2回。(文・寺島武志)
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『タイタニック』に惨敗…。
時代をおいてけぼりにした怪作
『北京原人 Who are you?』(1997)
製作国:日本
監督:佐藤純彌
特撮監督:佛田洋
脚本:早坂暁
キャスト:緒形直人、本田博太郎、片岡礼子、丹波哲郎、北大路欣也、ジョイ・ウォン
【作品内容】
2001年、日本の研究所が北京原人の骨のDNAを元に、現代に北京原人を復活させることに成功した。しかし中国政府が、北京原人は中国のものであるとして連れ去ってしまう。現代人に翻弄されてしまう北京原人はどうなってしまうのか…。
日中合作映画『敦煌』(1988)など、数々の超大作を成功に導いてきた佐藤純彌がメガホンをとり、当時の香港映画界屈指のスター、ジョイ・ウォンをメインキャストに抜擢するなど、国際色豊かな豪華キャスティングで注目を集めた。
【注目ポイント】
北京原人の化石から取り出したDNA操作により、50万年の時を超えて現代に甦った北京原人と現代人との交流を描いたSFファンタジー作だが、本田博太郎演じる北京原人「フジタカシ」が陸上大会に出場して、その驚異的身体能力を披露するという、もはやコメディー映画といっていい展開である。
社会派からシリアス系、時代劇、ヤクザ映画まで幅広く出演し、バイプレーヤーとして活躍している本田博太郎だが、テレビドラマ「警視庁・捜査一課長」で見せていたような、被り物も辞さない役作りの原点を垣間見せる作品だが、20億円もの製作費に対し、興行は4億5000万円に終わり、当時、同じタイミングで公開された『タイタニック』などの洋画に押されっ放しだった日本映画界に追い打ちをかけた“珍作”として記憶されるに至っている。
しかしながら、その“領有権”を巡って、日本と中国が対立し、その狭間で北京原人が困惑する展開は、現在でも度々問題となる、領土をめぐる国家間対立のメタファーとして見ることができる。また、今観ると、随所に四半世紀も前の作品とは思えないほどの斬新さもある。
邦画“冬の時代”に製作されたこと、SFファンタジーとして大真面目に製作したことがすべて裏目に出てしまった格好だが、逆に考えれば、時代とマッチしていなかったことが、大コケの最大の要因だと考えられなくもない。脚本といいキャラクター設定といい、前衛的過ぎたのだ。
現在、邦画が再び、その勢いを取り戻しつつある。しかしながら、残念なことに、安直なテレビドラマの映画化や、人気マンガの映画化も多い。それならば、オリジナル脚本で、コメディー路線に大舵を切った映画が再評価される日も来るかもしれない。
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