巨額赤字で大爆死! 史上最低の大コケ日本映画(4)。名作アニメ悪夢の実写化…大改悪で4億円の大惨事
名作と呼ばれる映画は、人々の心に刻まれ、愛され続ける。映画を製作した者にとってはこの上ない喜びであり、目指すところでもある。だが、映画も商売であり、興行収入が製作費を上回らない限り、その映画は“失敗作”になってしまう。今回は「製作費◯◯万円!」と銘打ったものの、大爆死…。そんな残念な日本映画を紹介したい。今回は第4回。(文・寺島武志)
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ガッチャマンが内輪揉め…。そんなヒーロー観たくない
大人も子供も大ブーイングの問題作
『ガッチャマン』(2013)
製作国:日本
監督:佐藤東弥
脚本:渡辺雄介
原作:竜の子プロダクション
キャスト:松坂桃李、綾野剛、剛力彩芽、鈴木亮平、濱田龍臣、岸谷五朗
【作品内容】
21世紀、悪の組織「ギャラクター」が現れ、たった17日間で地球の半分を占領されてしまう。ギャラクターは既存の兵器が通用しない「シールド」をまとっているため、防戦一方だった。
国際科学技術庁(ISO)の南部博士(岸谷五朗)は、不思議な「石」と800万人に1人の「適合者」のみがギャラクターのシールドを破ることを発見し、ギャラクターに立ち向かう、「ISOエージェント」の育成を始めた。13年後、適合者の健(松坂桃李)、ジュン(剛力彩芽)、甚平(濱田龍臣)、竜(鈴木亮平)はギャラクターに立ち向かう。
監督を務めたのは、『ごくせん』、『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』といった人気ドラマの演出を手掛けてきた佐藤東弥。
【注目ポイント】
1972年から2年間、テレビアニメとして放送され、絶大な人気を博した『科学忍者隊ガッチャマン』の初の実写映画版。近未来の東京を舞台に、世界征服を企む秘密結社「ギャラクター」と戦う5人の少年少女で結成された科学忍者隊「ガッチャマン」の活躍を描くSF大作だ。キャスティングされたのは松坂桃李、綾野剛、鈴木亮平ら。今では主役級のスターばかり。
ガッチャマンの特製Gスーツの製作費だけで2000万円を超えるなど、巨額の予算が投入されたが、最終的な興行収入は4億8000万円の“大惨敗”。ちなみに邦画のヒットの目安は、興収10億円とされている。かつて、チビッ子を夢中にさせた世界観、一流どころを揃えた俳優陣。本作はなぜ大コケしたのか。
まず挙げられるのが、キャラクターの大幅な改変だ。科学忍者隊は鳥がモチーフとしていたが、その設定が消えてなくなり、必殺技だった科学忍法「火の鳥」の使いどころは、敵のミサイル攻撃から逃れるためという、オールドファンから見ればガッカリな展開。加えて、ストーリー展開も総じて暗く、VFXに頼ったアクションシーンも、肝心の演者から迫力が感じられず、中途半端な印象を与えている。
そして極め付きは、科学忍者隊の中に恋愛の要素を持ち込み、内輪揉めが起きるというストーリーだ。原作のガッチャマンは愚直なまでに悪をくじく正義のヒーローだったにもかかわらず、その「正義」について悩むシーンも多く、見る側が期待するヒーロー映画とは程遠いものが描かれているのだ。
そもそも、ギャラクターによる地球侵略により、わずか17日で地球の半分が制圧され、人口の半数は死に絶えたとされながら、東京は全くの無傷という時点で脚本が破綻しているといわざるを得ない。
シリアス要素、コメディー要素、ロマンス要素をあちこちに無理やり入れ込むことで、話がややこしくなっており、原作を知る中高年層に対してのものなのか、アニメ好きのチビッ子向けなのかも不明瞭な作品となってしまい、その双方からソッポを向かれる結果を招いてしまった。
同作に限った話ではないが、昭和アニメの映画化の困難さを、改めて証明することにもなった一作だ。
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