実在する悪女の人生を描いた日本映画(3)。“明治の毒婦”をポルノで…エロスを交えて描いた冒険活劇
text by 編集部
サロメに楊貴妃、そしてクレオパトラ—。洋の東西を問わず、“悪女”はその美貌で男性を魅了し、男たちをその手の内で転がしてきた。しかし、よくよく調べてみると、“悪”の一言では片づけられない彼女たちなりの大義があったりする。本記事では、実在する“悪女“たちをテーマにした邦画5本を選定。彼女たちの悪の魅力を存分にご紹介しよう。今回は第3回。
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“明治の毒婦”高橋お伝の一生をエロスを交えて描いた冒険活劇
『毒婦お伝と首切り浅』(1977)
監督:牧口雄二
脚本:大津一郎
出演:東てる美、伊吹吾郎
【作品内容】
貧しい農家に生まれ、父の借金のかたに博徒・勝蔵に売られてしまったお伝は、ある日やってきた賭場泥棒の市太郎と逃亡に成功する。逃げる途中、お伝は勝蔵を殺してしまったお伝。その後、市太郎とお伝は熱い激情の中、強盗で生計を立てるようになる。道中、身軽な松助やお伝のレズ仲間・鈴月が参加。4人組になった彼らは、帝都銀行や駐在所などを次々と襲撃する。しかし彼らの行く手には、刑事・吉蔵らが迫っていた―。
【注目ポイント】
本作は、“明治の毒婦”と称された高橋お伝の官能と欲望の一生を、エロスとアクションを盛り込んで描いたポルノ作品。主演は東てる美で、カルト映画界の隠れた巨匠・牧口雄二がメガホンを取る。
本作のモデルとなった高橋お伝は、明治期に強盗殺人の罪に問われ斬首刑に処されたとされる女性。おどろおどろしいタイトルとポスターからさぞ陰惨な作品かと思いきや、実際にはアクションシーンが魅力の冒険活劇になっている。
なお、明治時代の「毒婦ブーム」の火付け役とも言われるお伝だが、殺人に至るまでのエピソードはなんとも不憫であり、情状酌量の余地も十分にある。女性犯罪者の場合、好奇の目に晒され、事実が捻じ曲げられうることも念頭に置いておきたい。
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