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「ふざけるな」悪夢の映画化…原作者激怒と噂の日本映画(3)”踏み台”にされた…傑作アニメの裏で泥沼の対立

text by 編集部

昨今のヒット映画のほとんどは原作モノであると言っても過言ではない。原作の知名度があることで企画が通りやすく、集客が見込めることなど、大人の事情が絡んでいるからだ。しかし原作を使用することは、ファンや原作者の意向も気にしなくてはならない。今回は様々な事情で原作者の怒りを買ってしまったと噂のある映画を紹介する。

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アニメ映画史上の金字塔…でも、原作の世界観と全然違う!

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)


出典:Amazon

原作:高橋留美子
製作国:日本
監督・脚本:押井守
キャスト:古川登志夫、平野文、神谷明、杉山佳寿子、鷲尾真知子、藤岡琢也

【作品内容】

翌日に迫る学園祭の準備に大忙しの友引高校。ラムやあたるも準備に勤しんでいた。そんな中、担任の温泉マークとサクラは同じ日が繰り返されていることに気づき、生徒たちに帰宅するよう命じる。しかしラムとあたる以外は、帰ろうとしても学校へ戻ってきてしまうという異常事態に陥る…。

【注目ポイント】

押井守監督Getty Images

同作は、1980年代の人気テレビアニメ『うる星やつら』の劇場版2作目。1作目に引き続き、監督は世界的なクリエイターとして、後に“巨匠”とまで呼ばれることになる押井守が務め、脚本も担当した。

同作でも、その幻想的な表現や高い完成度の音楽、時間を繰り返すモチーフなどで後のアニメ表現に多大な影響を与えた日本アニメの歴史における金字塔的作品の一つとされている。

物語は、「文化祭の前日」が何度も繰り返される怪奇現象をきっかけに、見慣れた景色が崩壊していくというストーリーだ。

「ループもの」の先駆け的な作品であり、押井氏の世界観がスクリーンいっぱいに表現されたSF作品となっている。ストーリーに対する評価も高く、劇場版『うる星やつら』シリーズの最高傑作との呼び声も高い。

しかし一方で、原作と比べてキャラクターの行動や発言に違和感のあるシーンも多く、「原作が改変され過ぎている」と憤るファンも多かった。

原作者の高橋もまた否定的なコメントを発している。高橋は同作について「面白い作品」としながらも、「これは押井さんの作品です」と突き放すような発言を残した。また試写会では「(自分と押井の)人間性の違いです」と言い残して帰ったという。

そもそも、『うる星やつら』は基本的にはギャグマンガだ。そして、高橋の志向する本来のラブコメディーからはかけ離れている場面が多く、シリアスなシーンやメタ的なセリフも多く、諸星あたるやラムちゃんの行動・言動には、原作やアニメによって世間の中で形作られたキャラクター設定からは考えられないものもあり、原作ファンの間では批判も上がった。

結果的に同作をきっかけにして、SFアニメ監督として大きく羽ばたいた押井と、その“踏み台”にされた高橋。表立って対立したことはなかったが、その後、高橋作品に押井が関わることはなかった。

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