「ふざけるな」悪夢の映画化…原作者激怒と噂の日本映画(5)。とんでもない改悪、もはや別物…酷評の真相は?
昨今のヒット映画のほとんどは原作モノであると言っても過言ではない。原作の知名度があることで企画が通りやすく、集客が見込めることなど、大人の事情が絡んでいるからだ。しかし原作を使用することは、ファンや原作者の意向も気にしなくてはならない。今回は様々な事情で原作者の怒りを買ってしまったと噂のある映画を紹介する。
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宮部みゆき原作映画No.1の興行収入
『模倣犯』(2002)
原作:宮部みゆき
製作国:日本
監督・脚本:森田芳光
キャスト:中居正広、津田寛治、城戸真亜子、山﨑努、伊東美咲、木村佳乃、寺脇康文、小池栄子
【作品内容】
東京の下町にある豆腐屋の孫娘、古川毬子が失踪して10ヶ月がたった。そんなある日、公園のゴミ箱から女性の体の一部とバッグが発見された。犯人はマスコミを使って犯行声明をだすが、首謀者と思われる男が事故死して事件は解決となった。しかし、真犯人は別にいると網川浩一(中居正広)が主張するのだが…。
【注目ポイント】
映画『模倣犯』は、宮部みゆきによる長編ミステリーを、中居正広が主役を務め映画化された作品だ。その他のキャストにも錚々たる名前が連なっている。
原作小説は元々、1995年から1999年まで『週刊ポスト』に連載され、2001年に単行本が刊行されたものだ。1995年といえば、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件などの天変地異や劇場型犯罪が相次いだことで、社会不安が広まった時期と重なる。数々の連続惨殺事件を描いた同小説のヒットも、そうした背景も影響したと考えられる。
しかし本人によれば、小説のモチーフは、1988年の宮崎勤事件と1994年の井の頭公園バラバラ殺人事件だとしている。同作によって、宮部は毎日出版文化賞特別賞や芸術選奨文部科学大臣賞を受賞している。
そもそも、この長編小説での出来事を2時間余りに収めることはほぼ不可能だ。そこで、監督と脚本を兼任した森田芳光は一考した末、人物設定や事件そのものの設定を大幅に改変し、主犯役の中居正広をより引き立たせる脚本とした。
出来上がったものは、森田芳光のカラーが色濃いものとなり、彼なりの遊び心もあって原作を大幅にアレンジした挑戦的な作品に仕上がり、興行収入16億円とヒットを収めた。
ただし、原作のファンの声に耳を傾けると「とんでもない改悪映画」といった評価も散見される。「もはや別物」といった声もあるほどだ。そもそも、中居正広が演じた主人公・ピースの職業からして違う。大胆な改変を施した森田にとって、こうした厳しい声を浴びることは“想定内”だったのかもしれない。
ストーリーの改変は、原作ファンのみならず原作者である宮部をも怒らせてしまったという説もある。その中には、試写会において、あまりに酷い改変に宮部が激怒し、途中で帰ってしまったというものもある。
しかし、もはや定説化してしまったこの噂、実はデマだったのだ。実際には会場のエアコンが効きすぎており、上映途中にトイレに駆け込むことになったという真実を、後に本人が語っている。
『理由』(2004)や、『ソロモンの偽証』(2015年)など、宮部の小説が原作となった数多くの映画作品の中では、同作が最も興行的には成功を収めていることも事実だ。
原作のストーリーを改変されるのが嫌なら、映画化を断る、脚本制作に自ら加わるなど、いくらでも方法はあるはず。同作に限っていえば、『模倣犯』という“食材”を、森田芳光という天才的な“料理人”に任せた作品なのだ。
試写会の途中で帰ったというデマが独り歩きしたことで、ヒット作にも関わらず、一部では「駄作」という評価もされた同作だが、宮部が激怒したという話は、いわゆる“都市伝説”の域を超えないものなのだ。
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