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「そんなわけあるか!」ツッコミどころ満載のSF日本映画(5)。悪夢の黒歴史…下品すぎる描写で汚点級の駄作

text by 寺島武志

洋画に比べるとまだまだ充実度が低い印象のある日本のSF映画だが、努力のあとが見られる作品はある。しかし、あまりにもスケールが大きすぎたり設定が甘いと、観る側を困惑させてしまうのがSFの難しい点だ。今回は、そんな国内のSF映画のなかから、特にツッコミどころの多い作品を5本セレクトした。(文・寺島武志)

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斎藤工の“黒歴史“…?
タイムスリップドタバタコメディー

『麻雀放浪記2020』(2019)


出典:Amazon

上映時間:118分
監督:白石和彌
脚本:佐藤佐吉、渡部亮平、白石和彌
キャスト:斎藤工、もも(チャラン・ポ・ランタン)、ベッキー、的場浩司、岡崎体育、ピエール瀧、音尾琢真、村杉蝉之介、伊武雅刀、矢島健一、吉澤健、堀内正美、小松政夫、竹中直人

【作品内容】

戦後間もない1945年。麻雀クラブ「オックス」では20歳の天才ギャンブラー・坊や哲(斎藤工)がドサ健(的場浩司)、出目徳(小松政夫)、クラブのママの八代ゆき(ベッキー)との賭博麻雀に挑んでいた。その最中、哲は出たら死ぬかもしれないと言われている役満役“九蓮宝燈(チューレンポートン)”で上がろうとした時、オックスに雷が直撃、いつの間にか哲は、2020年にタイムスリップしてしまう。

2020年、第三次世界大戦の敗戦国となっていた日本は再び戦後を迎えており、東京五輪も中止となり、不況の中、治安も悪化。マイナンバー制度の強化や共謀罪による言論統制によって行き過ぎた超監視社会と化してした。さらにはAIが労働力を担うようになった一方で、街には失業者が溢れかえっていた…。

【注目ポイント】

主演の斎藤工ショートショート フィルムフェスティバルアジア2021よりGetty Images

1984年に和田誠監督で映画化された阿佐田哲也の小説『麻雀放浪記』を、作品に惚れ込んだ主演の斎藤工と監督の白石和彌のコンビで再映画化したコメディー作品。

原作の主人公である坊や哲(斎藤工)が戦後の1945年から第三次世界大戦で東京オリンピックが中止となった2020年へとタイムスリップしてしまうという大胆なアレンジと痛烈な風刺を織り込み、全編に渡ってiPhoneで撮影されたことでも話題になった。

封切り直前になって、主要キャストのピエール瀧が麻薬取締法違反で逮捕されたことにより公開が危ぶまれたが、予定通りに公開された。

第三次世界大戦はともかく、東京五輪が中止となるという設定は、奇しくも現実と重なる部分もあり、空恐ろしくなる。大不況や治安の悪化、AIによる失業率上昇など、あり得そうな未来を提示しているディストピア映画の一面も見せている。

しかし、阿佐田哲也による原作とは違い、麻雀そのものをクローズアップすることなく、ストーリーはタイムスリップとその後のドタバタ劇に終始し、阿佐田哲也ファンからも麻雀ファンからもそっぽを向かれる結果に終わった。

予定調和が過ぎるストーリーや、あまりにも下品な描写により、白石和彌監督にとっても、主演の斎藤工にとっても“汚点”となってしまった作品だ。

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