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「バカにしやがって!」原作者がブチギレた名作映画(3)。主演が違う!? 伝説の超名作も実は不満たっぷり?

text by 寺島武志

莫大な予算をかけて製作される海外映画。そのクオリティーは素晴らしく、人々の記憶に残る名作として受け継がれていく。しかし作品としての出来は良くても、原作者の意向を無視して激怒させてしまったという危うい作品もある。今回はキャラクターや脚本の大幅な改変、キャスティング問題などが原因で原作者が激怒した海外映画を5本紹介する。(文・寺島武志)

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女性の憧れを詰め込んだ宝石箱のような映画
原作者がオードリー・ヘップバーンのキャスティングに不満

『ティファニーで朝食を』(1961)


出典:Amazon

原題:Breakfast at Tiffany’s
製作国:アメリカ
原作:トルーマン・カポーティ
監督:ブレイク・エドワーズ
脚本:ジョージ・アクセルロッド
キャスト:オードリー・ヘプバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール、バディ・イブセン、マーティン・バルサム、ミッキー・ルーニー

【作品内容】

ニューヨークのアパートで暮らす美しい女性ホリーは、金持ちの男に貢いでもらうことで生活している。そして金持ちと結婚して玉の輿に乗ることを夢見ている。ある日、ホリーの部屋の隣に作家を夢見る男、ポールが越してくる。ポールは次第に自由気ままでミステリアスなホリーに惹かれていく…。

1960年のニューヨークを舞台に、自由気ままに生きる美女ホリー(オードリー・ヘプバーン)と彼女に惹かれる作家ポール(ジョージ・ペパード)の愛を描いたロマンティックコメディー。

【注目ポイント】

女優のオードリー・ヘプバーン
オードリーヘプバーンGetty Images

原作を手がけたのは、10代から物書きとして活躍した天才小説家、トルーマン・カポーティ。『ピンク・パンサー』シリーズなどのコメディー作品を数多く手がけたブレイク・エドワーズのメガホンによって製作された名作中の名作だ。

主人公は言わずと知れた“20世紀最高の女優”の1人、オードリー・ヘプバーンが務め、彼女の代表作の1つとなった。主題歌の「ムーン・リバー」も大ヒットし、アカデミー歌曲賞を受賞した。

清純派女優だったヘプバーンが奔放に生き、愛人生活を送る女性を演じたことは、当時の米国映画界において、エポックメーキングな出来事として語られ、彼女の女優像のみならず、米国全体の女性の価値観にも影響を与えた。

しかし、55年後の2016年に公開されたドキュメンタリー映画『ティファニー ニューヨーク五番街の秘密』(原題『Crazy About Tiffany’s』)において、『ティファニーで朝食を』の主役には、もともと別の女優が候補に挙がっていたことが明かされた。

その女優とは、米国女性のセックスシンボルとして活躍していたマリリン・モンローである。仮にモンロー主演の『ティファニーで朝食を』が製作されていれば、本作のイメージは一変していただろう。

ヘプバーン特有の上品さと魅力がなければ、作品は全く別のものになっていたに違いない。本作を通して、彼女はティファニーの顔になり、多くの女性たちは、彼女によって象徴された、洗練され教養に富んだブランドイメージに憧れたのだ。

一方、カポーティによる原作では、ホリーが娼婦であることを示すかなり露骨な表現が散見できる。彼は、ホリー役として、個人的に親交のあったモンローを望んでいた。

モンローはホリー役を演じることに当初関心を示していたが、プロデューサーが難色を示した。ホリー役にはもっと芯の通った強い女性が適役と感じていたのだ。さらに、モンローのセリフ覚えの悪さは映画界では有名であり、遅刻癖もあることで、モンローの主役起用はリスクが高いという結論に至った。

また、セックスシンボルのイメージを嫌悪していたモンロー側から断りがあったという説もある。かくして、カポーティが望んだモンロー主演の『ティファニーで朝食を』は実現しなかった。

一方、ヘプバーンは出演の条件として、自分が演じる役が娼婦だという事実をやわらげるように、脚本の一部の変更を求めた。脚本を担当したジョージ・アクセルロッドは、その要求を飲み、マイルドな表現に書き換えた。

結果として映画は、カポーティの原作とは異なる、夢見る女性のロマンティックなラブストーリーとして生まれ変わり、より親しみやすい物語として大ヒット。カポーティの懐も潤うことになったが、内面では忸怩たる思いを抱いていたのかもしれない。

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