「史上最悪のエンディング…」絶望的ラストで有名な映画(5)悪夢の裁判…正義なき日本の現実を描く衝撃の傑作
今回は、バッドエンディングで知られる作品の中から、世界的に評価の高い作品をセレクト。一筋の希望も見出せない、絶望的なクライマックスで観る者の心をズタズタに引き裂く作品が勢ぞろい。観終わったあと、席を立てなくなるほどの衝撃が味わえるはず。
●有罪か無罪か…。痴漢冤罪をテーマにした社会派映画
『それでもボクはやってない』
製作国:日本
監督:周防正行
脚本:周防正行
キャスト: 加瀬亮、瀬戸朝香、もたいまさこ、山本耕史、鈴木蘭々、光石研、野間口徹、大森南朋、田中哲司、正名僕蔵、高橋長英、小日向文世、役所広司
【作品内容】
フリーターの金子徹平(加瀬亮)は、満員電車に乗り込んだところ、女子中学生から痴漢を訴えられる。警察へと連行された徹平は無実を主張するが、警察や検察からの厳しい取り調べに遭い…。
『Shall we ダンス?』(1996)で知られるヒットメイカー・周防正行監督が11年ぶりに発表した、オリジナルシナリオによる社会派ドラマ。ロングヒットを記録し、キネマ旬報ベストテンで第一位に輝くなど、批評家からも高く評価された。
【注目ポイント】
疑わしきは罰せず―。刑事裁判の原則中の原則である。しかし、そんな言葉も、この映画を見た後はどこまでも虚しく響くだろう。本作が突きつけるのは、そんな日本の現実である。
本作は、痴漢冤罪事件を通じて日本の刑事裁判制度に疑問を投げかける社会派作品。監督は「シコふんじゃった。」などのコメディ映画で知られる周防正行で、加瀬亮が状況に翻弄されながらも自らの無罪を主張し続ける男を巧みに演じている。
本作の一番の特徴は、逮捕から裁判に至るまでのリアルな描写だ。裁判の様子を描写した映画は世界中に数多く存在するが、おそらく本作ほど真に迫った描写はそうないだろう。なお、周防は本作の制作にあたり、3年以上の歳月をかけて綿密な取材を行ったという。
しかし、本作は単なる「教育ビデオ」では終わらない。周防は、主人公の家族や支援者たちによる人間味あふれる戦いを克明に描き、大人も子どもも楽しめるエンターテインメントに仕上げている。
さて、本作の“ラスボス”は、小日向文世演じる裁判長・室山。その能面のような表情と、淡々と判決文を読み上げる様子は、まさに日本の法制度の虚しさそのもののように思える。ぜひその目で確認してほしい。
(文・しばちゅう)
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