世界絶賛! 最も偉大なボクシング映画は? 珠玉の超名作映画(4)絶望のラスト…希望なき展開が生む超傑作
スポーツを題材にした映画は、人々の心を熱くさせる力を持つ。その中でもボクシング映画は人気があり、今でも多くの作品が生み出されている。目標に向かって苦しみながら努力する姿や、負けたくないという意地だけで立ち上がる姿には、経験者ではなくとも背中を押される。そこで今回は洋画のボクシング映画を5本セレクトしてご紹介する。
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巨匠クリント・イーストウッドが老境のトレーナーを熱演
『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)
上映時間:133分
原題:Million Dollar Baby
製作国:アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
原作:F・X・トゥール『テン・カウント』
脚本:ポール・ハギス
キャスト:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、アンソニー・マッキー、ジェイ・バルチェル、マイク・コルター、マーゴ・マーティンデイル、ブライアン・F・オバーン
【作品内容】
うらぶれたボクシングジムの老トレーナー、フランキー・ダン(クリント・イーストウッド)は、20年来の親友のエディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス(モーガン・フリーマン)と共にジムを切り盛りし、数多くの優秀なボクサーを育て上げたが、不器用なフランキーは安全面を考慮するあまり慎重な試合しか組まず、成功を掴みたいボクサーは別のジムに引き抜かれていくばかりだった。
そんなフランキーの前に、アメリカ中西部の田舎町からやって来たというマーガレット・“マギー”・フィッツジェラルド(ヒラリー・スワンク)という31歳の女性が入門を申し込んでくる。
【注目ポイント】
本作は巨匠クリント・イーストウッドの監督25作目にしてアカデミー賞主要4部門を制したヒューマンドラマだ。
“尊厳死”というラストシーンは、あまりに非情で悲しすぎるだけではなく、宗教的・思想的にも論争を巻き起こし、障がい者団体からもクレームを受けた。しかし、メインテーマである“師弟愛”を前面に押し出したイーストウッド監督によって、この上ない感動作に仕上がっている。
結果、本作は2005年のアカデミー賞で、作品賞・監督賞(クリント・イーストウッド)・主演女優賞(ヒラリー・スワンク)・助演男優賞(モーガン・フリーマン)に輝いている。
ヒラリー・スワンク演じる主人公マギーが、イーストウッドが演じる引退したトレーナーフランキーと心を通わせ、常勝街道を突き進んでいく序盤から中盤にかけての胸のすくような展開は、ボクシング映画の魅力的な部分が凝縮されており、素晴らしい。
一方、マギーが敵ボクサーの反則行為を受け、植物状態になってしまう終盤は、ただただ重苦しく、映画が別のジャンルに移行してしまったかのような印象を与える。
かつてアカデミー賞を席巻した『許されざる者』(1992)で、「最後の西部劇」を撮り上げたクリント・イーストウッドは、ここでも過去に作られたボクシング映画の歴史を踏まえ、血湧き肉躍る描写で観客を魅了すると同時に、希望の光など一切見えないシビアすぎるクライマックスを描き込むことで、「最後のボクシング映画」を撮ろうとしていたのかもしれない。
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