世界絶賛! 最も偉大なボクシング映画は? 珠玉の超名作映画(5)狂気の役作り…比類なき傑作を産んだ名優の魂
スポーツを題材にした映画は、人々の心を熱くさせる力を持つ。その中でもボクシング映画は人気があり、今でも多くの作品が生み出されている。目標に向かって苦しみながら努力する姿や、負けたくないという意地だけで立ち上がる姿には、経験者ではなくとも背中を押される。そこで今回は洋画のボクシング映画を5本セレクトしてご紹介する。
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主人公のモデルは実在するボクサー
「デ・ニーロ・アプローチ」が生まれるきっかけとなった一作
『レイジング・ブル』(1980)
上映時間:129分
原題:Raging Bull
製作国:アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ
原作:ジェイク・ラモッタ
脚本:ポール・シュレイダー、マーディク・マーティン
キャスト:ロバート・デ・ニーロ、キャシー・モリアーティ、ジョー・ペシ、フランク・ビンセント、ニコラス・コラサント、テレサ・サルダナ、マリオ・ガロ
【作品内容】
実在のボクサー、ジェイク・ラモッタの半生を描いた本作。
今まで無敗だったジェイクは、ダウンをとったにも関わらず、相手に有利な判定で試合負けた。納得がいかないジェイクは、妻や弟に当たり散らしてしまう。
その後も不利な判定負けをしてしまうジェイクは、八百長を持ちかけてくる組織の大物の誘惑に負けて承諾してしまう。その後、見事にチャンピオンに輝くも、周囲を疑う心が芽生え、破滅の道へ向かってしまう…。
【注目ポイント】
巨匠マーティン・スコセッシ監督と名優ロバート・デ・ニーロがタッグを組み、世界ミドル級王者で、“レイジング・ブル(怒り狂った猛牛)”の異名を取った実在のボクサー、ジェイク・ラモッタの半生を描いた作品だ。
ラモッタの栄光と、自らの強すぎる猜疑心がもたらした、その後の虚栄に満ちた人生を、光と影を鮮烈に反映させたモノクロ映像で描いており、家庭を持つ頃だけ、カラー映像に切り替わる。
よって、ボクシングシーンはモノクロで描かれており、この対比が本作の見どころ。粒子の荒いモノクロ映像で描かれた試合シーンは、壮絶な迫力だ。
ボクシング映画としてのクオリティが高いのはもちろん、ストーリーの根底にあるのは、妻や弟を失っていく男の悲哀を描いた人間ドラマだ。
現役時代の体型と舞台の楽屋で練習している体型は全くの別人である。デ・ニーロは、同じ作品の同じ役で、なんと27キロもの増量して臨み、その役作りは「デ・ニーロ・アプローチ」と呼ばれるまでに。常軌を逸した役作りが功を奏し、デ・ニーロは本作で見事、アカデミー賞主演男優賞を受賞した。
晩年のラモッタは家と家族を失った上に、経営するクラブで未成年の女子を雇った罪で逮捕される。収監されたジェイクは、所内で暴れて独房へ入れられる。ジェイクは自分のバカさ加減を嘆き、何度も壁を殴って男泣きに泣く。
デップリと太った引退後のラモッタからは、ボクサーの第二の人生の難しさを表現している。実際、現役引退後に身を滅ぼす元ボクサーは少なくない。本作は、そんなボクシング界の暗部を赤裸々に描いており、観る者の心にスカッとする瞬間とモヤモヤする気持ちの両方を味わわせることで、比類のない傑作となっている。
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