「鬼畜すぎる…」実在する殺人事件をモデルにした日本映画(3)衝撃の整形…社会現象の逃亡犯、痛烈批判の問題作
今回は実際に起きた殺人事件をベースにした日本映画を5本セレクト。実話ならではの血なまぐさいエピソードがてんこ盛り。香り立つ悪のバイタリティに圧倒されること間違いなし。映画の内容を紹介するとともに、モデルとなった事件の顛末も解説する。(文・寺島武志)
●殺人犯の約3年に渡る逃亡生活に密着。遺族から痛烈に批判された問題作
『I am ICHIHASHI 逮捕されるまで』(2013)
監督:ディーン・フジオカ
脚本:湯浅弘章、Team D
キャスト:ディーン・フジオカ 、小柳友貴美、よっちゃん、岸本尚泰、末吉功治
【作品内容】
当時22歳の英会話学校講師の英国人女性リンゼイ・アン・ホーカーさんが2007年、千葉県市川市のマンションで強姦の末、殺害され、容疑者として全国指名手配された市橋達也の2年7か月にわたる逃亡劇を、本人の手記を基に映画化された作品。
したがって、犯人である市橋側からの視点で描かれた側面が強く、公開当時は遺族側から強い反感を買った。一方、事件はセンセーショナルな衝撃で世間に受け止められた。逃亡中にメディアによって繰り返し報じられることによって、ネット上で“市橋達也ファンクラブ”が生まれるなど、現実と虚像が入り乱れる事態となったことでも記憶されている。
市橋は、逃亡直後に自らハサミを使って、唇を切るなどの“整形手術”を施し、日本全国を逃げ回る中で、経験したことがない肉体労働によって金銭を得て、その貯金を元手に病院での整形手術を受ける。結果、それが逮捕につながるのだが、以上のようなプロセスを、まるでロードムービーのようなストーリー展開で描いている。
追い詰められては逃げ、また追い詰められる…。恐怖にとらわれながらの逃亡劇に迫る本作からは、市橋の罪深さとともに、人間の普遍的弱さが浮き彫りにされ、その2年7か月の心の移り変わりが描かれている。
上述したように同作は、犯罪者を美化しているなどという批判にさらされた。とはいえ、事件そのものを風化してしまうよりも、リスクを取って映画化することによって、犯罪を記録するという点では、製作した意味を見出せる作品だと言えるだろう。
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