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北欧ホラーの金字塔は…? 心がざわつく美しき恐怖映画(1)邦題はミスリード…純粋で残酷、衝撃の結末は?

幽霊、悪魔、呪いは一切出てこない。しかし不穏な空気感に寒気が止まらず、クセになる北欧ホラー。神話や逸話を元に創造される物語は、性的マイノリティや社会問題についても言及され、恐怖心よりも心に残る映画体験を私たちに提供してくれる。今回は、雄大な自然の中、美しく繊細に描かれる北欧ホラー作品を5本ご紹介する。(文・佐澤ともみ)

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眩い雪景色に包まれた、最も純粋で残酷なヴァンパイア・ホラー

『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008年)

出典:Amazon

舞台:スウェーデン
監督:トーマス・アルフレッド
脚本:ヨン・アイビデ・リンドクビスト
出演:カーへ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナル、ヘンリック・ダール

【作品紹介】

「スウェーデンのスティーブン・キング」の異名をとるヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストによるベストセラー小説『MORSE-モールス-』を著者自らの脚本により映画化。本作は国内外で数々の賞にノミネートされた。

雪の降りしきる季節、ストックホルム郊外のアパートで母親と暮らす12歳のオスカー。ある日隣室に親子と思しき二人が越してくる。窓を覆い隠し、夜にしか行動しない謎多き隣人をオスカーは気に留める。

ちょうどその頃、近隣地域では不可解な殺人事件が多発していた。そんな中、オスカーはアパートの中庭で隣室の少女・エリと鉢合わせ、話をする仲に。孤独を抱える二人は次第に心を通わせ幼き恋人同士となるが、やはりエリには秘密があった。

【注目ポイント】

主人公のオスカーを演じた俳優のカーへ・ヘーデブラント
主人公のオスカーを演じた俳優のカーへヘーデブラントGetty Images

舞台はスウェーデン郊外に実在する町、ブラッケベリ。冬は長く、毎日凍えるような寒さが続く地域だ。作中で一面に広がる純白の雪景色は息をのむほど美しいが、まるで町に封じ込められているような閉塞感も伝わってくる。

オスカーの隣室に越してきた少女(エリ)と老人(ホーカン)は実際の父娘関係にはなく、その正体は12歳の姿のまま200年を生きる吸血鬼と、そんなエリに尽くす庇護者であった。ホーカンはエリの飢えを凌ぐために殺人を犯し、最終的にはエリが身元を掴まれぬよう自ら硫酸を被るという、病的なまでの心酔っぷりを見せる。

ちなみに、「(私が)もし女の子じゃなくても好きだと思う?」という台詞や、エリの股間に去勢の痕がある通り、エリは女の子でもなければ子供でもない(つまり『200歳の少女』という邦題は盛大なミスリードを含んでいる)。

しかし、それでもオスカーとエリは惹かれ合う。オスカーは学校で執拗ないじめを受けており、家族に対してもどこか気を遣っている様子。居場所のないオスカーにとって、殺しをしてでも必死に生きてきたエリは、尊敬の念と愛おしさを感じずにはいられない相手だったのかもしれない。

終盤、「ここを去って生き延びるか 留まって死を迎えるか」とエリが手紙を残すシーンがある。この時、オスカーがエリの庇護者となり、ホーカン同様悲しい運命を辿る未来が観客の脳裏をよぎる。だが、ラストシーンを観れば、そんな想像は杞憂だったと気付かされるだろう。

本作はジャンル上ホラー映画だが、残酷さや恐ろしさは常に美しさと表裏一体であることを見事に証明しているかのような、感動的な場面であった。

町を覆う雪の白色とエリが啜る鮮血の赤色によるコントラストや、残酷な行為と子供の純粋な心など、相反する要素によって不均衡さを表しているところがこの作品の大きな魅力だ。

果たして二人がどのような選択をするのか、結末をぜひその目で確かめてほしい。

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