「絶対に助からない…」 “世界の終わり”を描く映画(1)。精神崩壊がリアルに…美しくも残酷な人類の滅亡
新型コロナウイルスの流行によって人々の暮らしは一変した。今後、さらに恐ろしい災難がやってこないとは限らない。今回は世界滅亡の危機を描いた作品を5本セレクト。惑星衝突、パンデミック、異常気象…。映画を通じて”世界の終わり”を追体験することで、いつかくるかもしれないXデーに対して心の準備をしておくことは無駄ではないだろう。(文・寺島武志)
鬼才ラース・フォン・トリアーが描く
美しくも残酷な世界の終わり
『メランコリア』(2011)
原題:Melancholia
製作国:デンマーク・スウェーデン・フランス・ドイツ・イタリア
監督:ラース・フォン・トリアー
脚本:ラース・フォン・トリアー
キャスト:キルステン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、アレクサンダー・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング
【作品内容】
巨大惑星「メランコリア」の接近で終末を迎える地球で、そこに暮らす人々の葛藤や絶望を描き出していくドラマ。
盛大な結婚パーティを開く一方で、空しさも感じていたジャスティン(キルスティン・ダンスト)と、惑星衝突を過剰に心配するクレア(シャルロット・ゲンズブール)の姉妹を軸にストーリーは進んでいく。地球を滅亡の危機に陥れる惑星名であり、映画のタイトルでもある「メランコリア」とは“鬱病”という意味をもつ。監督のラース・フォン・トリアーは、うつ病治療の最中に、本作を着想したと公言。それもあってか、登場人物のメンタルが壊れていく様子が、リアルに伝わってくる。
【注目ポイント】
惑星が地球に接近する中で、死を恐れる人々の鬱屈した精神状態を描いた作品であり、一つひとつの描写に計り知れない説得力がある。惑星の接近は、地球滅亡を意味するが、不思議なことに、惑星が近づくにつれて、ジャスティンの心はなぜか軽やかになっていく。
しかしながら、彼女の精神状態とは裏腹に、惑星は地球に接近してくる。彼女は周りが狼狽する様子も意に介さず、惑星の衝突と地球の終焉の時を、心安らかに迎えるというラストシーンで締められている。
「もし、もうすぐ地球が消滅するとしたら、あなたは残りの時間をどう過ごしますか?」。このような問いを与えてくれる作品だ。
自分だけが死ぬのならば、食べたい物を食べるとか、会いたい人に会うとか、様々なことが考えられる。しかし、家族、そして人類すべても一緒に滅亡するとなると、1人ひとりが違った答えを持つことになるだろう。そんな極限状況をスクリーンを通じて体験させてくれるのが、この作品の魅力である。
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