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「毒のように美しい」岩井俊二監督の世界に誇る日本映画(4)心えぐる鬱映画の傑作…女子の丸刈姿に周囲が号泣

霧がかかったような美しくて儚い雰囲気の映像と文学的な表現に、じわじわと効く毒のように心を掴まれる岩井俊二作品。2023年10月に映画『キリエのうた』の公開を控え、2023年7月〜9月まで、歴代の岩井俊二監督の人気作品をYouTube上で無料公開を実施。新作への期待が高まる中、今回は歴代の岩井俊二監督作品を5本紹介する。(文・野原まりこ)

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世にも美しい“鬱映画”の傑作

『リリイ・シュシュのすべて』(2001)


出典:Amazon

監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
出演:市原隼人、忍成修吾、蒼井優、伊藤歩、大沢たかお、稲森いずみ

【作品内容】

美しい田園が広がる、地方都市に暮らす中学2年生の蓮見雄一(市原隼人)は、親友だった星野(忍成修吾)にいじめられ、辛く苦しい日々を送っている。そんな中、唯一の救いは「リリイ・シュシュ」の歌を聞くことだ。雄一はファンサイトを立ち上げ、そこで仲間を見つけるのだが…。

【注目ポイント】

市原隼人
市原隼人Getty Images

本作は、岩井俊二がインターネットの掲示板に投稿した小説を元に映画化された。

いじめや犯罪、レイプ、自殺など14歳の少年少女には抱えきれない闇を、これでもかというほど詰め込んだ内容になっており、観た人の心が苦しくなることから“鬱映画”として有名。鑑賞には注意が必要だ。

とはいえ、キワモノ映画では決してなく、多感な10代のリアルを瑞々しくも赤裸々に活写した、青春映画の傑作である。

多感な学生時代に、学校で大なり小なりいじめを受けた、あるいはその場に居合わせた、という経験を持つ人は少なくないだろう。本作は、観る者の心をえぐる、思わず目をそらしたくなるような描写も含まれているが、それは中学生の残酷なほどにピュアな心情表現と密接に関わっている。

主役の雄一に扮したのは、本作が映画初出演となる市原隼人。また、忍成修吾扮するいじめっ子に援助交際を強要される、薄幸の少女・詩織役を、ブレイク前の蒼井優が演じている。岩井は、自身が手がけた原作のキャラクターに寄せることよりも、本人たちの資質に合わせて脚本を書き換えていったという。

劇中に出てくる、伊藤歩演じる久野陽子という女生徒が丸坊主にするシーンでは、クラスメイト役の子供たちが女の子の丸刈りの頭を見て衝撃を受け、泣いてしまったというエピソードもある。

YouTubeチャンネル「岩井俊二映画祭」では映画の本編には採用されなかった未公開シーンも公開している。本作を鑑賞した後に、ぜひチェックしてみてほしい。

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