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「毒のように美しい」岩井俊二監督の世界に誇る日本映画(5)天才すぎる…青春のキラメキを表現した傑作は?

霧がかかったような美しくて儚い雰囲気の映像と文学的な表現に、じわじわと効く毒のように心を掴まれる岩井俊二作品。2023年10月に映画『キリエのうた』の公開を控え、2023年7月〜9月まで、歴代の岩井俊二監督の人気作品をYouTube上で無料公開を実施。新作への期待が高まる中、今回は歴代の岩井俊二監督作品を5本紹介する。(文・野原まりこ)

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恋に揺れる美しい感情に心を奪われる

『花とアリス』(2004)


出典:Amazon

監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
出演:鈴木杏、蒼井優、郭智博

【作品内容】

素直な性格の花(鈴木杏)と自由奔放なアリス(蒼井優)は、何をするにも2人一緒だった。ある日、花は宮本先輩に恋をして尾行や盗撮をするようになる。

そんな中、宮本が手元の本に夢中になってシャッターに頭をぶつけて倒れると、花は宮本に「宮本先輩は記憶喪失で自分に好きだと言った」と嘘をつく。

この一件で2人は付き合うようになるが、そのうち花の嘘がバレて、宮本はアリスに想いを寄せるようになる…。

【注目ポイント】

女優の蒼井優Getty Images

鈴木杏と蒼井優が織りなす空気感が良い。仲良しの女の子2人の会話がなんともリアルで、台本やカメラなんて存在しないのではないかと思わせる。

だが、ただ2人がそこにいるだけのように見えて、実はそこに行き着くまでのストーリーの流れや、キャラクター設定が秀逸であることに気づく。

学生の頃、誰もが通学途中の電車やバスの中で、このまま学校をサボったらどうなるだろうと考えたのではないだろうか。そしてそれを実際に実行してしまった人も少なくないだろう。

花とアリスは、通学途中に寄り道した駅で一目惚れした少年の盗撮をするようになる。恋の衝動に突き動かされ、ついつい常軌を逸した行動をとってしまうのも思春期ならではだろう。しかしながら、ほとんどの人は、大人になるにつれてそうした記憶や感覚は失われていく。だが、岩井俊二は青春期特有の日常のキラメキを拾い集め、映画に閉じ込める天才なのだ。

素直で不器用な花と、芸能事務所にスカウトされるほどの容姿をもつ自由奔放なアリスの2人は、宮本という男子を挟んで三角関係になってしまう。友情と恋の間で揺れ動く中、素直に湧き上がる気持ちを抑えられない10代特有の苦しみが詰まっている

10代の頃の友情関係は少しのすれ違いから、修復不可能になってしまう危険性をはらんでいるが、ラストシーンの2人の絆の強さに胸を打たれる。

ここまで岩井俊二の映画を解説してきたが、その魅力の真髄を言葉で伝えることなどできない。ぜひ配信などで、各自の目で美しさを発見してほしい。

(文・野原まりこ)

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