海外絶賛! 2000年以降、世界で最高評価の日本映画(5)邦画の金字塔! 現代が産んだ史上最高の傑作は?
海外にもファンの多い、独特の魅力を誇る日本文化。特に日本映画において世界に知られている人物や作品といえば、昔でいえば黒澤明や三船敏郎、現代でいえばアニメ作品が多いだろうか。今回は、そんな日本映画の中でも、2000年代以降で特に海外で評価されている作品をご紹介する。
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近年最高の日本映画。カンヌ4冠受賞のロードムービー
『ドライブ・マイ・カー』(2021)
上映時間:179分
監督:濱口竜介
原作:村上春樹
脚本:濱口竜介、大江崇允
キャスト:西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生、安部聡子
【作品内容】
劇作家であり俳優の家福(西島秀俊)は、妻の音(霧島れいか)と仲睦まじく暮らしている。
人気脚本家である音の創作方法は一風変わっている。音が物語を着想するためには、家福とのセックスが必要とされる。音がベッドで口述した物語は家福によって記憶され、彼が語り直した内容を基に脚本が執筆されるのだ。
舞台の上演を終えた家福は、妻の紹介で若手俳優の高槻(岡田将生)と会う。高槻は音がシナリオを担当したドラマへの出演経験があり、家福に尊敬の念を抱いている。
ある日、家福はロシアの演劇祭から招待を受ける。音は録音テープを夫に渡し、家福を送り出す。テープには、戯曲『ワーニャおじさん』のセリフが音の声で吹き込まれてある。
家福は愛車「サーブ900」の車内でテープを再生し、妻の声に合わせて、セリフの練習に励むのだった。
【注目ポイント】
濱口竜介氏が監督3作目にして、日本映画初となる脚本賞を含むカンヌ4冠を獲得し、世界各国でも数々の賞を受賞した日本映画の金字塔的作品。
広島の美しいロケーションをバックに、妻を亡くし、喪失感の華夏で生きる演出家の家福悠介(西島秀俊)と、彼の専属運転手を務める無口な女・渡利みさき(三浦透子)が「サーブ900ターボ」を駆りながら織りなすロードムービーだ。
原作はあの村上春樹の小説。プロデューサーを務めた山本晃久が熱心な“ハルキスト”だったことから、濱口に映画化を打診。
濱口は「村上作品の映画化は困難」としていたが、リアリティーあふれ、かつ比較的低予算で作ることができることから、同作の映画化の提案に応じ、製作にこぎつけた経緯がある。
原作から多少の改変がなされたものの、村上側からのクレームは一切なかったという。
それでも濱口は、村上春樹が持つ独特の世界観を損なうことなく、1人の男が、言葉少なな女性との関わりを通じて、生きる希望を取り戻していくという美しいストーリーを描き切っている。
広島の瀬戸内海の美しい風景をバックに、モーツァルトやベートーべンのクラシック音楽やルイ・アームストロングの歌声が作品を彩っている。
撮影地に広島を選んだ理由として濱口は、その美しさに加え、原爆という悲劇から立ち直った街であることを挙げている。
カンヌ4冠という快挙のみならず、海外の批評家からも高い評価を受け、「2021年最高の映画」として、人々の記憶に残る名作となった。
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