えっ…あのセリフは脚本にない!? 日本最高のアドリブ俳優(1)衝撃…怒号と暴力の嵐の中に恐るべきユーモア
映画の撮影は、本番前にリハーサルをすることが一般的である。カメラや役者がどのような動きをするのか綿密に計算されて作られている。しかし、そうした段取りを裏切り、突然台本にはない動きをする役者がいる。そうした“リアル感”は計算外の面白さを生み出すこともある。今回は、撮影中にアドリブ芝居が多い役者を5人セレクトして紹介する。(文・野原まりこ)
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世界のキタノも困惑するアドリブの多さ
西田敏行『アウトレイジ 最終章』(2017)
監督:北野武
脚本:北野武
出演:ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、大杉漣、松重豊、白竜、名高達男、光石研、原田泰造、中村育二、津田寛治、金田時男、池内博之、塩見三省、岸部一徳
【作品内容】
関東最大勢力を持つ暴力団・山王会と関西で勢いのある花菱会との抗争が終わった。大友(ビートたけし)は日韓で大きな影響力を持つ張会長の元にいた。
ある時、花菱会幹部の花田は韓国でトラブルを起こし、張会長の手下を殺してしまう。これにより、張グループと花菱の間に緊張の糸が張り詰める…。
激怒した大友は日本に戻るが…。
【注目ポイント】
「迷惑もハローワークもあるかい!」という名ゼリフは、西田敏行の口からで出たアドリブだ。
映画『アウトレイジ』シリーズをご覧になったことがある人ならわかるだろうが、あのいつ人が死ぬかわからない映画の中で、ユーモアのある言葉が出てくると、逆に怖さを増すようなことが起きる。
だが実は、これ以外にも本作での撮影中に西田敏行はアドリブを言いまくり、これには北野武監督も「西田のアドリブには本当に困った」と心情を吐露している。
本番中にかまされた西田のアドリブは、ほぼほぼカットされているようだ。このように、アドリブが良い方向に転がれば良いのだが、だいたいはカットされてしまうのが常。
監督としては、本来表現したかったはずの空気感やテンポを崩されるおそれのあるアドリブには困り物だろう。
だが、観ている我々にとっては、目の前に提示された映像が全てであり、こうした裏話や後にあのセリフが、実はアドリブだったと知るのは楽しい。
それに、また違った意味で現場の臨場感やヒヤヒヤ感が映像に伝染してくるというのは、ファンからしたらたまらないものがある。
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