史上最高の元ジャニーズ俳優は?演技が上手い”辞めジャニ”俳優(1)異端児の存在感…魅力と色気抜群の名脇役
ジャニーズといえば歌に踊りにトーク、それにお芝居もこなす超スーパースター集団である。とはいえ、彼らは過酷な下積み時代を過ごし、デビュー後も様々な苦難を乗り越えてきた苦労人だ。事務所の力だけでなく個々の実力がなければ今の地位はない。今回はジャニーズでトップを駆け抜け、退所後もなお輝く元ジャニーズの演技派5人を紹介する。
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再結成で話題の男闘呼組メンバー
繊細さと力強さを兼ねそなえた芝居が魅力
高橋和也
【注目ポイント】
高橋和也は1988年1993年まで活動していたジャニーズのロックバンド「男闘呼組」のメンバーである。同時期に活動していた少年隊や光GENJIとは異なり、ダンスで魅せるのではなく、パワフルな演奏と歌でファンを魅了。ジャニーズの異端児的なグループであった。
作詞作曲を自分たちで行い、“アイドルバンド”ではなく“アーティスト”としてのパフォーマンスが認められていき、順風満帆かと思われたが、高橋和也が突然ジャニーズ事務所を解雇されてしまい、男闘呼組は事実上の解散となった。
男闘呼組解散後の高橋和也は、俳優業をメインに活動し、崔洋一監督『平成無責任一家 東京デラックス』原田眞人監督『KAMIKAZE TAXI』など、名監督の意欲作にメインの役どころで出演。
しかし、ジャニーズの男闘呼組“高橋一也”(旧芸名)が染み付き、カッコつける癖が抜けずに苦労したという。とはいえ、本人の弁とは裏腹に、当時から高橋は、エキセントリックなキャラクターに血を通わせることに成功している。
俳優としてのキャリアを積むにつれて、役者としての色気も増していく。活動のフィールドは映画にとどまらず、三谷幸喜脚本の大河ドラマ『真田丸』では、関ヶ原の戦いで重要な働きをみせる、武将・宇喜多秀家役を好演。名バイプレイヤーとして独自の地位を築くきっかけになった。
映画『そこのみにて光輝く』では、表向きは親しみやすいが、裏では残忍な面を持つ男を演じ、高崎映画祭最優秀助演男優賞を受賞。現在の日本映画界を見回しても、複雑な内面を持ったキャラクターを任せたら、右に出る者はいないだろう。
高橋和也の演技を堪能するためのお勧めの一本
『ハッシュ!』(2001)
監督:橋口亮輔
脚本:橋口亮輔
キャスト:田辺誠一、高橋和也、片岡礼子、冨士眞奈美、光石研
直也(高橋和也)と勝裕(田辺誠一)は、男性同士のカップル。勝裕は周囲に自分がゲイであることを隠して生活している。そんなある日、2人の前に朝子(片岡礼子)という女が現れる。朝子は勝裕がゲイであることを知りながら、精子提供を求めるー。
ゲイカップルに精子提供を求める女との不思議な三角関係を描いた、いびつな人間関係の中に愛を感じる物語である。
『ハッシュ!』で高橋が演じたのは、ペットショップで働く“ゲイ”の青年・直也である。直也は、はっきりとものを言う、田辺誠一演じる恋人の勝裕とは対照的な性格の持ち主。何もかも正反対な2人は惹かれ合っており、両者のキスシーンは観る者をドキドキさせる。
体の線、動き、目線など、高橋の一挙手一投足に女性らしさが感じられる。さらに、勝裕への恋心も映像を通してしっかりと伝わる。
撮影当時、高橋は自分の中にある女性性を出すことを恥ずかしいと感じていたそうだ。しかし、直也というキャラクターが現実に生きているかのように見えるほど、その芝居はナチュラルだ。
結婚したくない女がゲイのカップルに精子提供を求める。という、普通に考えたら「そんな無茶な!」と思わざるを得ない展開にも、高橋を含めた熟練のキャスト陣の演技を観るにつけ、思わず納得させられてしまう。
見どころは、橋口亮輔監督特有の長回しのシーンだろう。このシーンで高橋は一度セリフを噛んでしまうが、その芝居がそのまま使われている。演技を超えた、役者の存在をスクリーンに刻み付けようとする橋口亮輔の演出と、すべてをさらけ出した高橋の芝居が堪能できる素晴らしいシーンだ。
『ハッシュ!』は今から20年以上前の2001年に製作されている。映画の中では、今よりもずっと根強かったトランスジェンダーの生きづらさ、古い世代による抑圧がリアルに描かれている。バラバラな3人のキャラクターを通して、“こうでなくてはいけない”という凝り固まった価値観を、優しく解きほぐしてくれるような作品だ。
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