シリーズ途中で強制終了…悪夢の打ち切り超大作映画(3)揉めまくり…”鬱映画”にされたスーパーヒーロー
アメリカやイギリスなどで名作と言われるファンタジー小説の映像化。日本で有名なあのヒット映画のなかには、権利の問題があったり、意外にも製作国では興行成績が全然振るわずシリーズの途中で打ち切りが決まってしまう作品がある。今回は、大ヒットと思われた大作5本の魅力を紹介するとともに、打ち切りになってしまった理由を解説していく。
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権利によって振り回されたスーパーヒーロー
『アメイジング・スパイダーマン』(2012~2014)
上映時間:136分
原題:The Amazing Spider-Man
製作国:アメリカ
監督:マーク・ウェブ
キャスト:アンドリュー・ガーフィールド、エマ・ストーン、リス・エバンス、デニス・リアリー
【作品内容】
幼い頃に科学者である両親が失踪し、心に傷を抱えたまま叔父夫婦のもとで暮らす青年ピーター・パーカーはある日、父有名な博士が父の研究仲間であったことを知り、訪ねる。しかしその研究所で、遺伝子実験中の蜘蛛に噛まれ、ピーターは超人的なスーパーパワーを手に入れ、正義のために戦うことを決意する。
今作は映画『スパイダーマン』のリブート作品である。サム・ライミ監督による『スパイダーマン』シリーズの興行的成功を受け、ソニーがリブート版を発表した。
【注目ポイント】
人気シリーズの「スパイダーマン」だが、その主人公であるピーター・パーカーの特徴として、化学オタクの冴えない高校生という設定があるが、本作のピーターは冴えない高校生という設定ではなく、粋でスタイリッシュな印象がある。
しかし、オリジナル版との違いなど些細な点に過ぎず、シリーズ打ち切りの主たる原因ではない。そう、『アメイジング・スパイダーマン』は製作陣が揉めに揉めまくった作品なのだ。
ことの発端はサム・ライミ版『スパイダーマン』制作時にさかのぼる。当時、マーベルが映画化権の商談をSONYに持ちかけた際、アイアンマンやマイティ・ソーの映画化を勧めたものの、SONYの関心はスパイダーマン一択。結果、「スパイダーマン」だけの権利を買い、サム・ライミ版が大ヒットする。
その後、マーベルもマーベルスタジオからMCU(Marvel Cinematic Universeの略称)を作り、『アイアンマン』や『マイティー・ソー』などが大ヒットした。
それに対抗するようにSONYが制作したのが『アメイジングスパイダーマン』なのだ。しかし上手くいかずに、SONYはマーベルと揉めることになる。ちなみに、マーベルは2009年にディズニーに買収されており、実質的にはSONY対ディズニーという構図となった。
しかし、現在は和解。スパイダーマンだけはマーベルとSONYの映画に出演することが可能となった。従って、今後スパイダーマンは、マーベルの『アベンジャーズ』とSONYの『ヴェノム』の両方の続編に出演することが可能となる。ファンは嬉しい限りだろう。
SONYとディズニーが大団円に終わったとはいえ、途中で製作を投げ出された『アメイジング・スパイダーマン』の無念が晴れるわけではない。
今作はあと一歩のところでヒロインを救出できずに物語は幕を閉じる。続編でその後がどう描かれるのか期待されていたが、打ち切りになってしまい主人公の心は浮かばれないまま…。鬱映画とまで評されることもあった。
しかし、2021年に公開されたマーベル作品『スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム』で、アンドリュー・ガーフィールド演じるスパイダーマンがまさかの再登場。『アメイジング・スパイダーマン』の尻つぼみのラストを回収するような見せ場もあり、落涙するファンが続出した。
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