名作に泥を塗る駄作…史上最低の日本版リメイク映画(1)世界的超傑作をぶち壊し…国民総スカンで壮大なズッコケ
優れた映画は国境を超え、異なる地域でリメイクされる。リメイク版の作り手は、オリジナルを超えるために知恵を絞るわけだが、中には、残念ながら力及ばず、縮小再生産になるどころか、オリジナルに泥を塗るような出来栄えの作品も。今回は、海外の映画をリメイクしたものの、不評を買った作品を5本厳選してご紹介する。
———————-
コメディというよりホラー…敗因は文化の違い!?
『おとなの事情 スマホをのぞいたら』(2021)
上映時間:101分
監督:光野道夫
脚本:岡田惠和
原作:『おとなの事情』(2016・イタリア)
キャスト:東山紀之、常盤貴子、鈴木保奈美、益岡徹、田口浩正、木南晴夏、淵上泰史、室龍太、桜田ひより
【作品内容】
18か国でリメイクされ“世界で最もリメイクされた映画”としてギネスにも認定されたイタリア映画『おとなの事情』の日本版作品。
年代も個性もバラバラの3組の夫婦と1人の独身男。ある出来事がきっかけで年に1回集まってパーティーを開く仲になる。再会の夜、メンバーの1人の話から「スマホ公開ゲーム」が始まる。
それはパーティーの間、メールも電話も内容をすべてメンバー全員に公開するというゲームだった。誰もが自分のスマホが鳴らないことを祈る中、それぞれが抱えた誰にも言えない“おとなの事情”があり、スマホが鳴る度に7人は、その恐怖と闘うというコメディー映画だ。
【注目ポイント】
“世界で最もリメイクされた映画”の一本として名高い『おとなの事情』の日本版リメイクである。韓国版リメイクである『完璧な他人』(2018)が日本でも話題を呼んだこともあり、期待はすこぶる高かった。
主役を務めたのは、2011年公開の『小川の辺』以来、実に10年ぶりの映画主演となった東山紀之。他にも鈴木保奈美、常盤貴子らの一流キャストが名を連ね、ヒット作を多く手掛けた岡田惠和が脚本を担当するなど、盤石の体制で制作されたものの、蓋を開けてみれば、全くといっていいほど受け入れられず、興行収入は1億8000万円と“大爆死”。コロナ禍真っ只中であったとはいえ、厳しい数字に終わった。
これだけの製作スタッフ、キャストを揃えながら、なぜ日本版は失敗に終わったのか。そもそも論となってしまうが、諸外国とは違い、日本において“他人のスマホを見る”という行為自体が、プライバシー侵害という犯罪にも近い行為として受け止められている。秘密が暴露されていくたびに修羅場となっていく様子は、ここ日本ではコメディーとしては成立せず、むしろ“ホラー”に近い感覚だ。
元はイタリア映画であった本作、そのエッセンスをそのまま日本に持ち込もうとした試みは失敗に終わったといってもいいだろう。
【関連記事】
名作に泥を塗る駄作…史上最低の日本版リメイク映画(2)
名作に泥を塗る駄作…史上最低の日本版リメイク映画(3)
名作に泥を塗る駄作…史上最低の日本版リメイク映画(全作品紹介)