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「無能な男が招いた地獄…」絶体絶命のサバイバル映画(4)。210名中199名が死亡、究極の雪山遭難事件

text by 編集部

今回は、究極の“詰んだ”シチュエーションを描いた映画をランキング形式で紹介。ちなみに“詰んだ”とは、物事が立ち行かなくなり、救済方法や解決方法が見つからない状況を言う。今回はそんな極限状態で、何度も「もう終わりだ…」と思わせられる、最後の最後まで気が抜けない、観ると猛烈に疲れる映画5選を紹介する。

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「天は我々を見放した」
210名中199名が死亡した遭難事件が題材

2位『八甲田山』(1977)”詰み度”90%


出典:Amazon

製作国:日本
監督:森谷司郎
脚本:橋本忍
原作:新田次郎
キャスト:高倉健、北大路欣也、加山雄三、丹波哲郎

【作品内容】

1902年(明治35年)、ロシアとの戦争準備として行われた、厳冬期の八甲田山での雪中行軍の演習中に青森の連隊が遭難し、210名中199名が死亡した八甲田雪中行軍遭難事件。同事件を小説化した新田次郎の『八甲田山死の彷徨』を、高倉健ほかオールスターキャストで描いた作品。

大部隊で自然を克服しようとする部隊と小数精鋭部隊で自然に逆らわず、折り合いをつけようとする様子を描き、極限状態での組織と人間のあり方を問いかける。北大路欣也が演じた雪中行軍隊・神田大尉の「天は我々を見放した」というセリフは当時の流行語にもなった。

【注目ポイント】

主演の高倉健Getty Images

猛風吹き荒れる極寒の雪山で遭難…。気の置けない仲間と一緒だったら何とかやっていけそうな気がする。しかし、本作で描かれるのは、権謀術数うずまく軍隊内のドロドロした人間関係だ。遭難のきっかけは、三國連太郎演じる傲慢かつ無能な上官の采配ミスなのだからたまったものではない。

次々と凍死していく兵士たち。死体に扮したエキストラの肌は紫色だが、それは特殊メイクによるものではなく、凍傷によるもの。雪山を舞台にした映画は古今東西に沢山あれど、本作以上に”寒さ”を映像に定着することに成功した作品はないのではないか。

一見、単なる行軍の準備不足のようにも思えるが、本作の雪山遭難にまつわる描写は、プロの登山家が見てもリアルそのもの。さらに、撮影現場は、参加した俳優が後年になってこぞって「あんなにきつかった現場はない」と回顧するほどの過酷さを誇り、日夜命がけの撮影が行われていたという。”詰んだ”の一言は、劇中の登場人物のみならず、撮影に参加したスタッフ、キャストが心の中で何度も呟いたに違いない。日本映画史に残る壮絶なサバイバル映画だ。

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