最も面白いゴジラ映画は? 特撮映画の歴史に残る名作(4)日本映画史上、最高級の傑作! その新境地とは?
世界で最も有名な怪獣映画『ゴジラ』。およそ70年にわたって数々の名作を送り込んできた同シリーズの製作には、円谷英二や本田猪四郎など、日本映画史を代表する才能たちが携わってきた。今回はハリウッド製作のものを含めると約40作品にものぼる「ゴジラ映画」の中でも、最も面白く、評価の高いものをセレクトした。(文・寺島武志)
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ゴジラ映画の新境地を切り拓いた政治シミュレーション映画
『シン・ゴジラ』(2016)
上映時間:82分
上映時間:119分
総監督・脚本:庵野秀明
監督:樋口真嗣
キャスト:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、余貴美子、市川実日子、國村隼、平泉成、松尾諭、津田寛治、光石研、高橋一生、古田新太、松尾スズキ、鶴見辰吾、小出恵介、斎藤工、前田敦子、野間口徹、嶋田久作、野村萬斎
【作品内容】
日本版のゴジラとしては、『ゴジラ FINAL WARS』(2004)以来、12年ぶりの映画作品で、シリーズ29作目。ある日突然、東京湾で水蒸気爆発が起きる。その事実はすぐに大河内清次総理(大杉漣)の耳にも入り、慌ただしく動く日本政府。その原因は海の中に潜むゴジラだった。赤い液体を体から噴出させながら接近するゴジラ。そしてついに、大田区蒲田に上陸し、都心へと突き進む。東京の街は逃げ惑う人々で阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
目的も正体も分からないゴジラに翻弄される日本。そんな中、内閣官房副長官を務める矢口蘭堂(長谷川博己)はその存在に対抗する術を探す。しかし、海外各国は核兵器を使い、街もろともゴジラを破壊しようと考え、その案は国連安保理の場で決議されてしまう。
【注目ポイント】
庵野秀明監督による「シン・シリーズ」の1作目として製作された本作。その後、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(2021)、「シン・ウルトラマン」(2022)、「シン・仮面ライダー」(2023)と続いていく。
庵野は、従来の怪獣映画としてのゴジラのイメージを破壊し、新たなゴジラ像を描いている。まるで、それまでのゴジラシリーズを“マンネリ”と断じているかのようなアプローチだ。
しかしながら、従来のゴジラの造形美や凶暴性を失うことなく、全く役に立たない日本政府、SNSによるデマ…。非常時の日本人の行動をも露悪しているようで、本当にゴジラが東京に現れたらこうなるだろう思えるようなストーリーとなっている。よって、怪獣映画というよりも、ゴジラを介在させたヒューマンドラマに寄っている作品といえよう。
成功の秘訣は過去のゴジラ映画ではなく”ディスカッション映画”の傑作である『日本のいちばん長い日』(1967/岡本喜八監督)に範を仰いだ、登場人物たちの言葉の応酬を力強く見せきる演出だろう。
また本作は、戦後長らく棚上げにされてきた、日本の安全保障をめぐる問題にも鋭くメスを入れており、「政治シミュレーション映画」としての完成度も高い。その点、ゴジラ映画としては変化球だが、見方を変えれば、ゴジラ映画の新境地を切り拓いた作品であるとも言える。
興行収入は約82億5000年円の大ヒット。これは歴代ゴジラシリーズとしては最高記録となっている。世界中でも公開され、各国でも高評価を得た。
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