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再放送NGでお蔵入り? 高視聴率でも闇に葬られた民放ドラマ(4)過激な暴力に演者も犯罪者に…悪夢を見た傑作

text by 寺島武志

放送当時は人気を博していた筈のあのドラマ作品が、なぜか再放送されない、もしくはいつの間にかされなくなった…。そんな作品に心当たりはないだろうか。今回は、何らかの理由で再放送が不可能となった不運な民放ドラマを5本セレクト。なぜ再放送できなくなってしまったのか、その理由を詳しく解説しながらご紹介する。(文・寺島武志)

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野島伸司が放った衝撃作
出演者の不祥事によってお蔵入りに

『聖者の行進』(1998)

酒井法子【Getty Images】
酒井法子Getty Images

放送期間:1998年1月9日~3月27日
放送時間:金曜22:00~22:54
放送局:TBS系
脚本:野島伸司
最高視聴率:22.1%
キャスト:いしだ壱成、酒井法子、広末涼子、安藤政信、松本恵、雛形あきこ、渡辺慶、小林正寛、水沢アキ、デビット伊東、石橋保、斉藤洋介、段田安則、いかりや長介

【作品内容】

知的障害を持つ町田永遠(いしだ壱成)は、知的障害者達を積極的に雇用している竹上製作所という工場に住み込みで働くことに。

しかし、竹上製作所は、国からの助成金目当てで障害者を雇用しており、不当な賃金に加え、工場では、日常的に労働者を虐待し、奴隷のように扱っていた…。

【注目ポイント】

『高校教師』(1993年)、『人間・失格~たとえばぼくが死んだら』(1994年)、『未成年』(1995年)に続く野島伸司が脚本を手がけた「TBS野島伸司シリーズ」の第4弾。野島の作風を表現した、現代社会に対するアンチテーゼ的作品だ。

野島作品らしく、過激な暴力描写があり、放送当時、TBSには苦情が殺到。スポンサーからも問題視され、降板する企業も現れた。テレビ界にもコンプライアンスの波が及んできたことも関係しているだろう。しかし、見方を変えると、現在のテレビ局は手を出さないであろう題材に果敢に挑んだ意欲作だ。

その甲斐あって、平均視聴率は20.9%と、視聴者からは支持された作品となった。

本作は、1995年に茨城県水戸市の段ボール加工会社「アカス紙器」で起きた知的障がい者に対し暴行・強姦に及んだ「水戸アカス事件」をモチーフとしている。「アカス紙器」の社長も、障がい者雇用による助成金を受け取っていた一方で、実際には知的障がい者の従業員に対してほとんど賃金を支払っていないことが発覚し、詐欺容疑で逮捕されている。

作品自体は重厚な社会問題を扱った骨太な作品であったが、思わぬアクシデントから、“再放送NG”となってしまう。

まずは、ドラマ放送3年後の2001年に、主役のいしだ壱成が禁止薬物所持の疑いで逮捕されたこと。さらには2009年、酒井法子の当時の夫が覚せい剤所持で逮捕される。妻の酒井にも尿検査を求められたが、「預けていた子どもを迎えに行ってから対応します」と言い残し、そのまま姿を消すという芸能界史上に残る前代未聞の逃亡劇を起こす。

後に発見された酒井も覚せい剤を使用していたことが分かり、逮捕されてしまう。これを機に、酒井の出演作や過去の歌唱シーンもことごとく“再放送NG”となる。

ドラマ内容の過激さのみならず、主要キャストの不祥事のダブルショックで、お蔵入りとなった名作の1つだが、現在では配信での視聴が可能だ。

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