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OLが街から消えた…社会現象を巻き起こした伝説の民放ドラマ(2)戦慄のマザコン…世間を震撼させた名演技

text by 寺島武志

人気ドラマが社会現象が起こし、”○○現象”と名付けられることがあるのは周知のことだろう。中には、当時の世情や時代背景をご存じない人からしてみれば、本当にそんなことが…?と疑うような事態が起きたことも。今回は、伝説の社会現象を引き起こした民放ドラマを5本セレクト。起きた現象についても詳しくご紹介する。(文・寺島武志)

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マザコンを世に知らしめた“冬彦さん現象”

『ずっとあなたが好きだった』

佐野史郎
佐野史郎Getty images

放送期間:1992年7月3日~9月25日
放送時間:金曜日22:00~22:54
放送局:TBS系
脚本:君塚良一
最高視聴率:34.1%
キャスト:賀来千香子、佐野史郎、野際陽子、布施博、宮崎ますみ、橋爪功、小沢仁志、坂井真紀、田辺誠一、中村久美、坂井真紀、高田敏江

【作品内容】

西田美和(賀来千香子)はお見合いの末に、東大卒のエリート銀行員・桂田冬彦(佐野史郎)と結婚する。しかし、冬彦は美和を愛する一方で、母・悦子(野際陽子)の溺愛の中で育った超の付くマザコン男だったことが分かってくる。

2人との同居生活に疲弊していた美和は、高校時代の元恋人・大岩(布施博)と再会する…。

【注目ポイント】

主人公の西田美和が”3高”(高身長、高学歴、高収入)の男性と結婚し、幸せな生活を送るはずだったが、相手が超マザコンやセックス拒否症だと分かる。結婚を後悔した美和は、高校時代の恋人と再会し、彼の元へと走るというラブストーリー。

特筆すべきは、脇役であり、唐十郎の「状況劇場」にも所属していた舞台人であった佐野史郎の抜擢と、その演技だ。野際陽子の指を舐めるなど、その狂気を帯びたマザコンぶりが話題となり、「冬彦さん=マザコン男」を指す言葉として流行語大賞を受賞し“冬彦さん現象”と呼ばれるブームとなった。

放送開始当初は10%前半だった視聴率も、尻上がりに上がっていき、最終回に記録した最高視聴率は34.1%。この背景には、主役を食う怪演を見せた佐野の貢献が大きいだろう。木馬に乗りながら、美和からの離婚の提案を、唸り声を上げ全身を震わせながら、その提案を一蹴するシーンはあまりにも有名だ。

本作の反響は大きかったようで、佐野は、実生活の中で子どもから石を投げられたり、電車でお年寄りから睨まれるなどの苦労もあったと、後に告白している。

さらに、サザンオールスターズによる主題歌「涙のキッス」は、サザン初のミリオンセラーとなった。

放送当時37歳だった佐野は、この役で大ブレークを果たし、知的な役から、腹に一物持つ悪役、さらに68歳となった現在ではコミカルな役もこなす、ドラマに欠かせない名バイプレーヤーとして活躍を続けている。

実際、佐野は松江で代々続く医家に生まれ、自身は高校卒業後、絵画を学ぶために上京し美學校に進学、実家の医院は弟が継ぐ形になったが、出身高の松江南高は県下有数の進学校だ。その知的イメージに嘘はないのだ。

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