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街から女性が消えた…社会現象を巻き起こした伝説の民放ドラマ(4)過激すぎてPTA激怒…教師と女生徒の禁断の愛

text by 寺島武志

人気ドラマが社会現象が起こし、”○○現象”と名付けられることがあるのは周知のことだろう。中には、当時の世情や時代背景をご存じない人からしてみれば、本当にそんなことが…?と疑うような事態が起きたことも。今回は、伝説の社会現象を引き起こした民放ドラマを5本セレクト。起きた現象についても詳しくご紹介する。(文・寺島武志)

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“アンチ・トレンディードラマ”をテーマに制作された衝撃作

『高校教師』

女優の桜井幸子
桜井幸子Getty Images

放送期間:1993年1月8日~3月19日
放送時間:金曜22:00~22:54
放送局:TBS系
原作・脚本・企画:野島伸司
最高視聴率:33.0%
キャスト:真田広之、桜井幸子、京本政樹、持田真樹、峰岸徹、赤井英和、中村栄美子、渡辺典子、黒田アーサー、小坂一也、若林志穂、金田明夫、小宮健吾、山下容莉枝、広田レオナ

【作品内容】

大学の研究室で三沢教授(小坂一也)の助手をしていた羽村隆夫(真田広之)は、教授の紹介で日向女子高校に生物の教師として赴任する。
羽村は、婚約者がありながら教え子である、二宮繭(桜井幸子)に惹かれていく…。

【注目ポイント】

前年に製作された『愛という名のもとに』(フジテレビ系、1992)で、不倫、自殺、レイプ、イジメなど、人間の持つ側面を露悪的に表現したドラマで名を上げつつあった野島伸司の脚本により、教師と生徒の恋愛や同性愛さらには近親相姦といった社会的タブーに果敢に挑み、最終回に記録した最高視聴率は33.0%と大反響を呼んだ。

教師の羽村隆夫(真田広之)と女子生徒の二宮繭(桜井幸子)との許されない恋、さらには繭が実父である耕介(峰岸徹)と近親相姦の関係にあるという衝撃的な展開。さらに、その事実を知った羽村が耕介を刺し、繭とともに逃避行するというストーリーは、従来の学園ドラマの概念を破壊するサスペンスドラマとも呼べる作品だ。

加えて教師の藤村知樹(京本政樹)が、繭の親友である相沢直子(持田真樹)を校内でレイプ、その模様をビデオ撮影するといった過激なシーンも作品に盛り込まれた。当時、持田真樹は17歳の駆け出し女優。京本ともども体当たりで臨み、全身を傷だらけにしながら、本シーンを演じ切ったが、現在であればあり得ないだろう。

野島伸司の脚本家としての方向性を決定付ける作品となったことは自身も認めているが、あまりにも過激な演出は賛否両論を呼び、視聴率と反比例するように、全国のPTAからは問題視され「子どもに見せたくない番組」ワーストランキングにも数えられることになる。後に同じ曜日の同時間帯に放送された『聖者の行進』(TBS系、1998)ではスポンサーが降板する事態にまで発展した。

主題歌にこだわりがあるのも野島作品の特徴の一つで、本作の主題歌には小規模のライブハウスを中心にインディーズで活動し、1983年には引退していたシンガーソングライター・森田童子を抜擢。その楽曲「ぼくたちの失敗」は約90万枚を売り上げるリバイバルヒットとなった。

トレンディードラマ全盛のこの時代にあって、“アンチ・トレンディードラマ”を目指して企画され、本作を皮切りに、『人間・失格~たとえばぼくが死んだら』(1994)、『未成年』(1995)と続く「TBS野島3部作」と呼ばれる一連のドラマはいずれも重いテーマを扱っており、商業的にも成功を収めている。

『高校教師』はその後、ヒロインの柏木繭に遠山景織子を、教師の羽野一樹に唐沢寿明をキャスティングし、劇場版が製作されたが、ドラマの続編ではない。ドラマの最終回で隆夫と繭が死んだと思われるシーンで幕を閉じたことから、真田広之が「死んだと思われた人間が、実は生きていたという設定は視聴者に失礼」と、続編オファーを断ったといわれている。

さらに、そのあまりにも過激なストーリーが災いし、地上波での再放送はされておらず、一部シーンの使用も著しく制限され、2009年に突然、芸能界を引退した桜井幸子の姿にはモザイク加工されるなど、様々な面で“伝説”を残したドラマといえよう。

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