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「完全に狂ってる」新興宗教・カルト教団が登場する日本映画(1)。価値観を揺さぶる一作、その意味は…

text by 編集部
Getty Images

オウム真理教が暗躍しはじめた1980年代以降、日本ではたびたびカルト教団が世間を騒がせてきた。カルト教団が引き起こした事件は映画の作り手の想像力を刺激し、その結果生み出された作品は、現実を鋭く見つめかえす力をもっている。今回は、カルト教団が登場する日本映画の中でも、観る者の人生観を揺さぶる作品をセレクトした。

(配信状況に関する情報は2022年8月時点のもの)

主人公は二世信者の少女
価値観の違いに苦しむ姿が胸をうつ

『星の子』(2020)


出典:amazon

監督:大森立嗣
原作:今村夏子
脚本:大森立嗣
キャスト:芦田愛菜、岡田将生、大友康平、高良健吾、永瀬正敏、原田知世

【あらすじ】

中学3年生のちひろ(芦田愛菜)は、優しい父(永瀬正敏)と母(原田知世)のもとで育った。ちひろの両親は、幼い頃から病弱だった娘を助けたい一心で新興宗教に入信。「神の水」と称される怪しい品物を高値で購入するなど、熱心な信者となっていった。幼い頃は両親の宗教活動に疑問を抱くことがなかったものの、思春期を迎えると状況は一変。両親の宗教活動が親友に知られ、距離を置かれることになる。親友から疑念を突き付けられても、決して両親を恨むことはしないでいたが、新任の南先生(岡田将生)に恋心を抱くようになると、人には言えない葛藤に苦しみはじめ…。

【注目ポイント】

原作は芥川賞作家・今村夏子による同名小説。『こちら駅前多田便利軒』(2011)、『セトウツミ』(2016)の大森立嗣がメガホンをとり、『告白』(2010)で主人公の娘役を演じるなど、幼少期から第一線で活躍する芦田愛菜が、悩める二世信者を熱演し話題を集めた。

初恋の相手から、愛する両親のことを「完全に狂ってる」と言われ、ジッと涙をこらえる芝居は痛切きわまりない。両親と学校生活のあいだで板ばさみになり、はるか宇宙に思いをはせることで現実逃避を試みるシーンは部分的にアニメーションで描かれ、主人公の夢の儚さを巧みに表現している。

宗教団体のイベントシーンでは、100名はゆうに超えるだろう大勢の信者たちが、声を合わせてあやしげな歌を合唱。イベントに集まった人々は、日常で見かける“たんなる普通の人”に見える。新興宗教が変人の集まりとしてステレオタイプなイメージで描かれていないため、主人公・ちひろのように、ひそかに世間とのギャップに苦しんでいる人が他にもいるのではないかと想像させられる。信者の気持ちを追体験させるという点で、観る者の価値観を揺さぶる作品だと言えるだろう。

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