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名作日本映画を超えちゃった? 史上最高のリメイク映画(5)まさかの大ヒット…評価散々でも売れたワケは?

text by 編集部

日本映画が海外でリメイクされヒットした作品がいくつか存在する。日本人としては海外に本国の映画が評価されたと思うと嬉しいものだ。今回は、日本でもアカデミー賞を受賞するなど話題となった作品の中から、オリジナル版に負けないくらい最高傑作となった作品を5本紹介。興行収入でも大成功を収めた作品をセレクト。

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アメリカで意外な大ヒット。批評家からは辛辣な意見も…。

『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』(2018)

アーノルド・シュワルツェネッガーの長男パトリック・シュワルツェネッガー
アーノルドシュワルツェネッガーの長男パトリックシュワルツェネッガー<br >Getty Images

上映時間:92分
原作:『タイヨウのうた』(2006)
製作国:アメリカ
監督:スコット・スピアー
脚本:エリック・カーステン
キャスト:ベラ・ソーン、パトリック・シュワルツェネッガー、ロブ・リグル、クイン・シェパード、ケン・トレンブレット、スレイカ・マシュー、ロブ・リグル

【作品内容】

本作は、「色素性乾皮症」という、太陽光を浴びることによって遺伝子に損傷を受け、皮膚がんを患う可能性のある病気によって、昼夜逆転の生活を送りながらも、夜中、ストリートミュージシャンとしている中で、1人の少年との出会いによって、人生が大きく変わっていく姿を描くヒューマンラブストーリーだ。

日本版である『タイヨウのうた』は、天川彩の原作を基に、坂東賢治の脚本、監督は小泉徳宏が務め、ヒロインの雨音薫役に「FLOWER FLOWER」のYUI、少年の藤代孝治役に塚本高史がキャスティングされた。

【注目ポイント】

当時、人気絶頂を誇っていた歌手のYUIを主役に据えたこの作品、実は1993年の香港映画『つきせぬ想い』のリメイクであり、その『つきせぬ想い』も、1961年の香港映画『不了情』から着想を得たものだ。つまり、『ミッドナイト・サン タイヨウのうた』は、再々々リメイク版ともいえる作品なのだ。

『タイヨウのうた』については、『つきせぬ想い』のリメイクと感じさせないほど、ストーリーの大幅な改変や、キャラクター設定の変更などがなされており、ほぼオリジナル作品といっていい作りとなっている。さらに、沢尻エリカと山田孝之の主演によるテレビドラマ版や、舞台版、ミュージカル版も製作され、米国でのリメイク版製作前には、ベトナムでテレビドラマ版が放送されている。

ハリウッドで製作された米国リメイク版は、俳優のほかでも、歌手としてビルボードチャートに入るなど、多才なベラ・ソーンを主人公に据え、相手役には、あのアーノルド・シュワルツェネッガーの長男であるパトリック・シュワルツェネッガーを抜擢。

比較的地味な日本映画のリメイクとあって、興行的な期待値は決して高くなかったにもかかわらず、興行収入は約2700万米ドル(約40億円)と低予算映画としては上々の成績。

一方、批評家の評価はやや厳しく、「単なる凡庸なラブストーリーに終始し、肝心の色素性乾皮症の描写が曖昧で、さらに正確ではない」といった辛辣なレビューも目立った。

脚本も坂東賢治の書いたものから、大幅な改変がなされたわけではなかったものの、主人公の2人の描写を前面に押し出したことが裏目に出て、肝心のテーマが薄くなってしまったことが、批評家からの低評価に繋がってしまったようだ。

しかしながら、興行成績だけみると大健闘と言っていいだろう。何より、日本国内で必ずしも大ヒットしたわけではない中規模映画が、海外のプロデューサーの目に留まり、しかるべきアレンジが加えられて、商品として成功を収めたのが素晴らしい。巨視的にみて、日本映画の発展に寄与するリメイクと、言い切ってしまって差し支えないだろう。

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