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まるで毒…最悪の犯罪の引き金に? 史上最も危険な名作映画(2)エグすぎる暴力…若者に与えた悪夢の影響は?

text by 寺島武志

映画は心の薬だ。スリリングなサスペンスやミステリー、人生を描くヒューマンドラマは、人々にとって娯楽であり刺激であり、日々を彩るのに役立つ。しかし同時に、毒になる危険性もはらんでいる…。中には映画を悪用し、事件を起こしてしまう者がいるのが現実だ。そこで今回は、皮肉にも犯罪者を生み出した映画を5本紹介する。(文・寺島武志)

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映画に影響を受けた若者による暴力事件が頻発…。
27年もの間上映禁止となった“いわくつき”の映画

『時計じかけのオレンジ』(1971)

映画「時計じかけのオレンジ」劇中カット。主演のマルコム・マクダウェル
映画時計じかけのオレンジ劇中カット主演のマルコムマクダウェルGetty Images

上映時間:137分
原題:A Clockwork Orange
製作国:アメリカ
監督・脚本:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
キャスト:マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー、マイケル・ベイツ、エイドリアン・コリ、ミリアム・カーリン、ウォーレン・クラーク、スティーブン・バーコフ

【作品内容】

舞台は近未来のイギリス・ロンドン。15歳少年・アレックス(マルコム・マクダウェル)率いる4人組不良グループ「ドルーグ」の面々は、バーでドラッグ入りミルクを飲んでいる。

その後、町に繰り出すと、川辺で寝ていたホームレスをステッキで滅多打ち。彼らにとって、盛りを過ぎた老人や野宿生活者は、殺しても構わない存在なのだった。

【注目ポイント】

本作は、後世の映画作家に絶大な影響を与えたが、同時に非常に危険な作品でもあった。原作者のアンソニー・バージェス自身も、その小説を「危険な本」と語っていたほど。近未来のロンドンを舞台に、若者が暴力とセックスが渦巻く社会を風刺している。また、それと同時に、鑑賞者も次第に倫理観を崩されていく。

公開直後から、本作に影響を受けた若者が次々と暴力事件を起こし、社会問題となる。事態はますます深刻化し、キューブリックの元にも殺害予告や脅迫状が大量に送られてくる事態に発展する。

そして1972年、アーサー・ブレマーという男がアラバマ州知事ジョージ・ウォレス暗殺を企図し逮捕される。彼の日記には「映画『時計じかけのオレンジ』を見て、ずっとウォレスを殺すことを考えていた」と記されていた。

この事件は、脚本家のポール・シュレイダーにも影響を与え、後に『タクシードライバー』を制作するきっかけとなる。

本作は、ロンドンで暮らしている15歳の少年、アレックス・デラージ(マルコム・マクダウェル)が、不良仲間「ドルーグ」のメンバーとともに、ドラッグ入りミルクを飲みながら、暴力行為の計画を立てる場面から始まる。

そして酔って寝ていたホームレスをこん棒で袋叩きにしたアレックスらは、他の不良グループもこん棒で叩きのめす。

その後、ある作家の家に押し入ったアレックスらは、作家の妻を襲う。さらに後日押し入った邸宅で老婦人を撲殺するが、他のメンバーは逃げ出し、彼だけが逮捕される。

アレックスには懲役14年の実刑判決を下されるが、収監されて2年が経とうとしていた時、「ルドヴィコ療法」なる医療行為の被験者となることと引き換えに刑期短縮の機会を得る。そしてアレックスは、その被験者となることを志願するのだが、その経験は、出所後のアレックスを苦しめることになるというストーリーだ。

様々な影響をもたらした本作は、アメリカでR指定を超えるX指定(17歳未満鑑賞禁止)で公開され、イギリスでは1973年から1999年までの27年にも渡り、上映を禁止された“いわくつき”の作品として知られるようになる。

キューブリック作品には危険な影響力がある一方、それだけ人々の心を抉り出す本質が描かれていることを証明するエピソードだ。イギリスでの再上映が可能となった1999年、キューブリックは既に他界していた。

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