宮崎駿ブチギレ…海外で改悪、酷評されたジブリ映画(3)題名も音楽も改悪…最高の名作をぶち壊した元凶は?
宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が世界で賞賛を受けている。今なお世界中で多くの人に愛されるスタジオジブリ作品。しかし、中には酷評を喰らった作品や、内容そのものを大幅に改変されてしまった作品も存在する。今回は、海外で不遇の扱いを受けてしまったジブリ映画を5本セレクトして紹介する。(文・寺島武志)
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題名「ラピュタ」の文字はどこへ…。久石譲の音楽も大幅改変
『天空の城ラピュタ』(1986)
上映時間:124分
監督・原作・脚本:宮崎駿
プロデューサー:高畑勲
洋題:『Castle in the Sky』
【作品内容】
舞台は19世紀のヨーロッパ。12歳の少女・シータは、亡き母の形見である”飛行石”を狙う政府によって捕われの身となっていた。
政府の飛行船での移動中、同じく飛行石を狙った空中海賊「ドーラ一家」から襲撃を受ける。シータは混乱に乗じて逃げ出そうとするも、足を踏み外して飛行船から落下してしまう。
上空から落下し、気を失ったシータは、飛行石の不思議な力によって、地上にゆっくりと舞い落ちる。
空から落ちてくるシータを助けたのは、鉱山町の見習い機械工の少年・パズーだった…。
【注目ポイント】
本作は英語版が2種類存在する。最初の英語版はストリームライン・ピクチャーズによって『Laputa:The Flying Island』というタイトルでで1989年に英国で公開された。
2つ目は2003年にディズニー系列のブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメントが『Castle in the Sky』の題で配給されたものだ。
日本では、前者の音源は2002年に発売されたDVDに収録され、後者は2014年に発売されたデジタルリマスター版DVDに収録されている。
現在、事実上の吹き替え版として残されているものは後者の『Castle in the Sky』だが、この作品もジブリの意向に反した改悪がなされている。まずはその題名だ。「ラピュタ」の文字が消えてなくなっている。
これについては、「ラピュタ」がスペイン語のLa Puta(売春婦)を想起させることで題名変更に至ったのだが、元はといえば、『ガリバー旅行記』を書いたジョナサン・スウィフトは、社会風刺の意味も込めて、作中に登場する天空の島にこんな名をつけたのだが、子ども向け作品としては少々不適切だったことは否めない。この件に関しては、裏事情が分かれば“やむなし”といえるだろう。
しかし、改変は内容にまで及び、主人公のパズーやシータのセリフや、キャラクター設定などにも改悪が加えられ、極め付きは、ディズニー側の意向で、宮崎駿の世界観やキャラクターの心情を表現するには欠かせない久石譲の音楽も大幅な改変を余儀なくされる。
オリジナルスコアの出来に満足していたという久石。しかし、ハリウッドの観客は上映中、常に音楽が鳴り響いている状態に慣れているため、「元々の『ラピュタ』の音楽の付け方だとなじめないのではないか」と懸念。新たに曲を録り直すことにしたというエピソードは有名だ。
本作に限らず、宮崎作品のラストシーンにはメッセージが込められているのだが、その文言にもメスが入り、宮崎が伝えたかったテーマを無視し、単なるファンタジー作品に堕したものとなってしまった。
「スタジオジブリ」が株式会社化して間もない時期に製作された作品だが、まるで足元を見られたかのような改悪に、宮崎はじめ、ジブリのスタッフにとっては悔恨の思いだけが残された出来事となった。
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