宮崎駿ブチギレ…海外で改悪、酷評されたジブリ映画(4)なぜそうなった…? 世界が戸惑った作品は?
宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が世界で賞賛を受けている。今なお世界中で多くの人に愛されるスタジオジブリ作品。しかし、中には酷評を喰らった作品や、内容そのものを大幅に改変されてしまった作品も存在する。今回は、海外で不遇の扱いを受けてしまったジブリ映画を5本セレクトして紹介する。(文・寺島武志)
ーーーーーーーーーー
日本国内でも賛否両論…。作風に戸惑いの声
『風立ちぬ』(2013)
上映時間:126分
監督・原作・脚本:宮崎駿
プロデューサー:鈴木敏夫
洋題:『The Wind Rises』
【作品内容】
大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気に襲われていた。そんな激しい時代に堀越二郎は、片田舎で少年時代を過ごしながらも、航空機の設計者になることを決意する。やがて、その夢を実現させ、彼は“ゼロ戦”を作り上げる…。
【注目ポイント】
2014年の第86回アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされていた本作。公開直後に宮崎駿が“引退宣言”したことから、「宮崎駿最後の作品」として大きな話題を集めた。しかしながら、そのシナリオは、太平洋戦争で大活躍したゼロ戦の設計者である堀越二郎と、堀辰夫の自叙伝的小説「風立ちぬ」を合わせたもので、従来のスタジオジブリ製作の作品とは違った大人向けの作品となっている。
その内容が賛否両論を巻き起こした。ゼロ戦設計者の堀越を主人公のモデルとしたことで、国内の一部の層からは、“戦争礼賛映画”という見方をされ、また別の層からは“非国家主義的”だと非難され、論争を呼んだ。
さらに、韓国では日本軍による残虐行為が淡々と描かれていることに、怒りを露わにする向きもあった。これに対し宮崎は、製作の意図を説明するための記者会見を開く必要にも迫られた。
宮崎は“最後の作品”として、あえて戦争中の人間ドラマを描き、平和の大切さを訴えたかったのだろう。国内外の評論家の評価は高かったものの、ファンタジーあふれる従来のジブリ作品を期待したファンにとっては拍子抜けする結果となってしまう。
特に日本アニメの人気があり、ジブリファンも多いフランスでは、その傾向が顕著で、フランス国内での興行収入は『崖の上のポニョ』の半分と振るわなかった。
惜しくもオスカーを逃した宮崎駿だったが、「ノミネートまでいってくれただけで十分」と満足顔で、長編映画から引退する。その10年後の2023年、宮崎は『君たちはどう生きるか』で復帰を果たす。この作品もまた、太平洋戦争を題材に盛り込み、平和の大切さを訴えている。
「ジブリ=ファンタジー作品」というイメージを自ら壊しにかかったようにも見えるが、純粋な平和主義者の顔も持ち合わせている宮崎。興行収入では測れない価値が、そこにはあるのだ。
【関連記事】
宮崎駿ブチギレ…海外で改悪、酷評されたジブリ映画(1)
宮崎駿ブチギレ…海外で改悪、酷評されたジブリ映画(4)
宮崎駿ブチギレ…海外で改悪、酷評されたジブリ映画(全作品紹介)