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日本映画史上最悪の続編は…?大失敗のシリーズ最低作(2)「こんなの寅さんじゃない」痛恨配役ミスだったのは?

text by 寺島武志

映画のシリーズ化はファンにとって喜びである一方、やはり前作を超えなければ意味がない。観客の期待はシリーズを追うごとに高まり、上限を知らないからだ。だが上がりきった評判は下がるしかないのが世の常。そこで今回は、残念ながら観客の期待に応えられなかったシリーズ史上最低の日本映画を5本セレクトして紹介する。(文・寺島武志)

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痛恨のキャスティングミスによってシリーズ最悪の烙印を押される

『男はつらいよ 幸福の青い鳥』(1986)

長渕剛
長渕剛Getty Images

上映時間:102分
監督・原作:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
キャスト:渥美清、倍賞千恵子、志穂美悦子、長渕剛、下絛正巳、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、吉岡秀隆、美保純、笠智衆、じん弘、すまけい、イッセー尾形、関敬六、不破万作、笹野高史、有森也実、マキノ佐代子、桜井センリ

【作品内容】

『男はつらいよ』シリーズ第37作となった本作。寅さんこと車寅次郎(渥美清)がかつて世話になっていた芝居座長の娘・島崎美保(志穂美悦子)と再会。

寅さんの勧めで上京した美保は、映画館向けの看板描きの仕事をしている画家志望の男・倉田健吾(長渕剛)と出会い、やがて恋に落ちていく…。

【注目ポイント】

1969年から2019年にかけて、実に全50作のも作品が製作された、誰もが知る邦画を代表する人気シリーズ。

長渕剛と志穂美悦子は、TBSドラマ『親子ゲーム』での共演がきっかけで交際に至り、本作の製作発表会見の場で長渕が“結婚宣言”し、翌1987年に入籍。志穂美は芸能界から引退した。

2人にとっては人生のターニングポイントとなった作品でもある。

長渕剛の抜擢には驚く声も多かった本作。しかし、長渕と渥美の絡みはほとんどなかった。

その演技は、気さくな兄貴ぶりを見せたかと思えば、自らの才能のなさに悩む芸術家としての繊細さや、好きな女性に素直になれない男の不器用さをひたむきに演じており、現在の彼からは想像もできないキャラクターだ。

しかし、その熱演は寅さんファンからは“暑苦しい”と不興を買い、「こんなの“寅さん”じゃない」という声まで聞かれる始末。渥美の存在を食ってしまうようなオーバーアクションを繰り広げる長渕のキャスティングは失敗に終わる。

テレビドラマ『家族ゲーム』シリーズでの一本気過ぎる大学7年生の家庭教師役や、『とんぼ』(1988)、『しゃぼん玉』(1991)でのチンピラ役として、その演技力も評価されていたものの、本作に関していえば、完全に“場違い”だったといわざるを得ない悪目立ちぶりだった。

誰の責任でもないが、ミスマッチを絵に描いたような作品として記憶されることになり、“シリーズ最悪”の声も致し方ないだろう。

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