パクリ疑惑のある日本映画は…? 物議をかもした問題作(5)監督の映画愛が炸裂…世界の名画を彷彿とさせる傑作
現在、日本では年間500本以上の映画が制作されている。しかし、いちから作品を作るのはいつの時代も難しい。そのため、時には、ヒット作のアイデアをしれっと拝借…なんてことも。そんなわけで今回は、ハリウッド映画からのパクリ疑惑がある邦画5本をご紹介。見どころとツッコミどころを解説する。(文・編集部)
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世界の名画から引用した映画愛あふれる感動作
『今夜、ロマンス劇場で』(2018)
上映時間:109分
監督:武内英樹
脚本:宇山佳佑
出演者:綾瀬はるか、坂口健太郎、本田翼、北村一輝、中尾明慶
【作品内容】
映画監督を志す青年、健司は、通い慣れた映画館「ロマンス劇場」の映写室で、古いモノクロ映画を発見。映画の中に登場する一国の王女、美雪に心を奪われた健司は、それ以来スクリーンの中の彼女に会うため、足しげく映画館に通い詰める。
そんなある日、ささやかな奇跡が彼に訪れる。なんと、美雪が実体となって現れたのだ。モノクロのまま現れた美雪に、カラフルな現実の世界を案内する健司。同じ時を過ごす中で、2人は次第に心惹かれあっていく。しかし、美雪は、ある秘密を抱えていた。人のぬくもりに触れると消えてしまうという秘密をー。
【注目ポイント】
本作は、『翔んで埼玉』(2019)で話題を呼んだ武内英樹監督作品。健司役を坂口健太郎が、美雪役を綾瀬はるかが演じる。
『テルマエ・ロマエ』(2012)や『劇場版 ルパンの娘』(2021)など、原作ありきの映画を多数制作してきた武内監督。本作が初のオリジナル作品かと思いきや、どうもそうではないらしい。
本作がモチーフにしている作品。それは、ウディ・アレン監督の『カイロの紫のバラ』(1985)だ。この作品は、無職の夫に嫌気がさした主人公セシリアが、スクリーンから飛び出した憧れの男性と恋に落ちるという作品で、本作はこの設定を男女反転させたものだと言える。
また、王女と一般市民の身分違いの恋は、往年の名作『ローマの休日』(1953)を、落雷が物語の転換点になるという設定は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)を、作中に登場する劇中劇は、『オズの魔法使い』(1939)を連想させる。
とはいえ、本作をパクりといってしまうのは少し安直だろう。どんな作品も、過去の作品からの引用であり、完全なオリジナル作品など世界に存在しないからだ。
実際、公式サイトには、本作が上記に挙げた古今の名画からインスパイアされていることをはっきり述べている。そういった意味では、本作はむしろ監督の映画愛が炸裂した作品と言えるかもしれない。
(文・編集部)
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