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「西島秀俊の最高傑作は…?」世界的評価の高いおすすめ出演作(1)。「これ夢なの?」浮世離れした魅力の名作とは?

text by 編集部
Getty Images

映画『ドライブ・マイ・カー』で主演を務め、第45回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞した西島秀俊。しかし彼の魅力はクールな表情や笑顔だけではない。ただそこに存在するだけで人を魅了する説明のつかない不思議な存在感に、女性のみならず男性からの支持も厚い。そんな西島秀俊の魅力に浸れる映画を5本紹介する。

子供のまま大人になってしまった人間の
葛藤や狂気を見事に表現

『ニンゲン合格』(1999)

監督:黒沢清
脚本:黒沢清
出演:西島秀俊、役所広司、菅田俊、りりィ、麻生久美子、哀川翔、大杉漣

【作品内容】

主人公の吉井豊(西島秀俊)は、14歳のときに事故に遭い、昏睡状態に陥った。10年間の眠りを経て、突然目覚めると、両親は離婚し、妹も離れて暮らしていた。孤独の身となった豊の面倒を見るのは、父の友人である藤森(役所広司)だ。バラバラになった家族を取り戻したい豊は、かつて一家で営んでいたポニー牧場を再生しようとするのだが…。

【注目ポイント】

昏睡状態から目覚めた青年が、失われた青春と家族を取り戻そうと奮闘する物語ー。この映画のストーリーを言い表わそうとすれば、さしずめそんなところだろう。しかし、そこはJホラーの名手・黒沢清、映画的な魅力が散りばめられた快作に仕上がっている。

本作の主人公・豊は、14歳で交通事故に遭い10年間眠り続けていた、いわば「子供のまま大人になってしまった」人間。世話人・藤森の目をよそに、ゲームセンターで子供と喧嘩してみたり、家に迷い込んだ馬の飼い主に暴力を振るったりとやりたい放題だ。

しかし、よくよく考えれば、豊は事故で貴重な青春時代を失ってしまったわけで、自らの人生に苛立ちや苦悩を抱えていてもおかしくない。西島は、感情を抑制した演技で、豊の内面の葛藤や狂気を表現しており、いつ暴発するかわからない無軌道さは、時空が脱臼するように切り替わる本作のリズムとも見事にシンクロしている。

西島のどこか浮世離れした佇まいも印象的だ。思えば、豊は本来死ぬ運命にあったはずの人間で、本作そのものが豊が今際の際に見た夢のようにも思えてくる。彼が最後に呟くこのセリフのように。
「これ夢なの?」
「おれ、ちゃんと存在した?」

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