日本映画史に残る俳優降板トラブル…悪夢見たワケあり邦画(2)前代未聞のドタキャン…騒がせ女優を救ったのは?
病気や怪我、はたまた役者の突然の芸能界引退…。スケジュールの厳しい撮影期間中、役者の急な降板トラブルは意外と多い。しかしそのピンチを、代役の俳優が思わぬファインプレーで作品を成功に導くことも。今回は邦画から代役を見事にこなした作品を5本セレクト。降板理由を交えて紹介する。(文・寺島武志)
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清水富美加、「宗教家」へまさかの転身
代役として共演者の「救世主」となったのは
降板→清水富美加 代役→石橋杏奈
『泥棒役者』(2017)
上映時間:114分
監督:西田征史
脚本:西田征史
キャスト:丸山隆平、市村正親、石橋杏奈、宮川大輔、片桐仁、高畑充希、峯村リエ、ユースケ・サンタマリア、向井理、片桐はいり
【作品内容】
ある豪邸へ脅されて仕方なく泥棒に入った主人公(丸山隆平)が、次々に現れる人々のせいで逃走できず、やむを得ず対応することになる。それぞれの勘違いが錯綜する中、次第に絆を深めていく。テンポの良さが際立つコメディ映画。
【注目ポイント】
西田征史が演出を手掛け、劇団たいしゅう小説家による演劇作品を、シナリオに改変を加えた映画化作品だ。西田自身も、「舞台版と映画版は別物」と告白している。
作中で、ヒロイン役を石橋杏奈が演じているが、当初、この役は清水富美加が務めており、一部、撮影も終えていた。
ところが、幾度にも及ぶ「体調不良による」撮影不参加が続いた後、突然の引退宣言により、前代未聞のドタキャンを犯すことになる。
その理由とは、清水が信仰していた「幸福の科学」での活動の専念と出家というものだった。作品が撮影途中だったことに加え、複数のテレビ番組にレギュラー出演していた彼女に対し、批判が殺到したことは言うまでもない。
急きょ代役探しが始まり、指名されたのは、映画出演の実績については遜色のない石橋杏奈。年齢こそ清水の3つ上(当時25歳)ではあったものの、小悪魔的な魅力が役柄に一致し、突然の大役抜擢に応えてみせた。
ちなみに、清水はその後、当時の幸福の科学総裁・大川隆法氏から、「千眼美子」という法名を受け、教団が運営する芸能プロダクションに移籍し、芸能活動を再開している。
石橋は舞台挨拶で、「ひょんなことから(本作に)出させていただくことになって…」と降板騒動をネタにしつつ、さらにユースケ・サンタマリアら共演者たちからは「救世主」「本当に助かった」とねぎらいの言葉をかけられた。
作品は、この騒動の影響でクランクアップが延び、さらに興行収入も約3億5000万円に終わった。しかしその脚本と、主演の丸山隆平の演技には評価する声も多く、丸山主演での舞台版が再演されている。
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