才能がヤバい…お笑い芸人が監督した最高の日本映画(5)リアル志向がすごい…最高峰の芸人監督といえるのは?
軽快なトークで人々を爆笑の渦に巻き込む芸人たち。彼らの中には、肩書きを超越し、絵描き、物書き、アーティストなど、笑いの分野以外でも活躍する者が多く、中には映画監督としての才を発揮する者もいる。彼らの独特な視点には目を見張るものがあることから、今回はお笑い芸人が監督した映画ベスト5を厳選して紹介する!(文・野原まりこ)
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実体験を基にしたリアルな描写が持ち味
品川祐『ドロップ』(2009)
原作:品川ヒロシ
監督:品川ヒロシ
脚本:品川ヒロシ
出演:成宮寛貴、水嶋ヒロ、本仮屋ユイカ、上地雄輔、中越典子、波岡一喜、若月徹(若月)、綾部祐二(ピース)
【作品内容】
不良に憧れる中学生のヒロシは、私立の中学から不良の集まる公立の中学に転校した。口が達者なヒロシは、不良を束ねる井口に気に入られ、不良の仲間入りを果たす。
【注目ポイント】
お笑いコンビ「品川庄司」の品川自身が執筆した半自伝的小説を基に、脚本・監督を務めた本作。興行収入20億を超える大ヒットを記録したことでも話題となった。不良映画だが、芸人らしい笑いを織り交ぜたコミカルな作りの映画だ。
成宮寛貴や水嶋ヒロなど豪華キャストの熱演と、平成の不良文化が押し出された“ダサかっこいい”雰囲気が心を掴む。ストーリーは王道ではあるが、不良映画でお約束のアクションシーンもしっかりと作り込まれており、見どころもたっぷりだ。
自身の経験を映画にしているだけあり、細部の描写がやけにリアルなのも素晴らしい。たとえば、敵の勢力が金属バットでファミレスで食事中の主人公一味を襲来するシーンでは、飛び散ったガラスの破片が手に刺さり、痛がる描写が見られる。
意外な展開は用意されておらず、不良映画のフォーマットを律儀に踏襲しているだけという見方もできるが、とはいえ、上で述べたようなリアル志向の演出が映画に血を通わせており、忘れられない一作として、観た者の心に残り続ける出来栄えとなっている。
品川はその後、何本も映画を監督している。出来不出来に波はあるが、初監督作品である本作でみせたリアル志向はどの作品にも見受けることができ、きちんとした批評、評価が待たれる映画作家の一人である。
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