イタくて酷い…ヤンキー漫画史上、最悪の実写化日本映画(5)「イタさ」が魅力だけど…? 安直すぎて共感できず
2023年には『東京リベンジャーズ』『Gメン』をはじめ、実写映画化に成功したヤンキー漫画原作。しかし、原作漫画はヒットしていたものの、実写されたことで世界観が違いすぎると炎上したものも少なくない。今回は、イタイとまで言われるツッコミどころ満載のヤンキー漫画原作の実写映画を5本セレクトする。(文・ZAKKY)
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芸人・品川ヒロシ自身のイタい自叙伝
『ドロップ』(2009年)
監督:品川ヒロシ
原作:品川ヒロシ
脚本:品川ヒロシ
出演:成宮寛貴、水嶋ヒロ、本仮屋ユイカ、上地雄輔、中越典子、波岡一喜、若槻徹、綾部祐二、増田修一郎、坂本雅仁、住谷正樹、宮川大輔、村上知子、河本準一、小林すすむ、庄司元春、バットボーイズ、又吉直樹、若旦那、
【作品内容】
ヤンキーの不良生活に憧れる中学生ヒロシは、進学校から不良の集まる公立中学に転校する。口だけは達者なヒロシは、学内最強の井口達也に気に入られ、不良グループとつるみだし、不良たちとの日常を満喫。喧嘩は弱いが、ぶつかり合いから仲間との友情を深めてゆく。しかし、ある日思いもよらなかった事件が起こった。
【注目ポイント】
元々は小説だが、『月刊少年チャンピオン』にて、鈴木大によるコミカライズ版が2007年から連載スタート。その後、原作者である品川ヒロシのメガホンで映画化された。ストーリー展開は非常にテンポがよく、わかりやすい。
アクションシーンもストップモーションを駆使し、緊張感のある、スタイリッシュな撮り方に惹かれる。俳優陣も最高の演技をしている。特に井口達也役の水嶋ヒロは、男も見惚れるようなカッコよさがあり、尚且つ狂暴なヤンキー像を見事に体現している。
さて、肝心の物語の内容はどうであろうか? まず第一に、主人公のヒロシは、メガホンをとった品川自身を投影したキャラクターである。
ここで、疑問に思うのは、主人公であるこの人物像に、どこの誰が共感するのだろうか? ということだ。いじめられっ子だった自分を変えたくて、腕っぷしでのし上がるキャラならともかく、口だけは上手い奴が主役とは…。
しかも、わざわざヤンキーの世界に飛び込むために転校をするなんて、親不孝も甚だしい限りだ。しかし、芸人の東野幸治が常々口にするように、芸人・品川の無二の魅力がその「イタさ」にあるのも事実。その点、所々でツッコミを入れながら見るにはもってこいの作品であることは間違いない。
物語に話を戻すが、今作で最も違和感を抱くのは、井口達也(水嶋ヒロ)の「人間は、そう簡単に死なねーんだよ」という決め台詞だ。
達也は、バイクで平気で相手のヤンキーに突撃する攻撃的な性格の持ち主。その一方で、ヒロシが慕う兄貴分の木村ヒデオ(上地雄輔)は、働いている建築現場で不慮の事故に遭い死亡する。
つまり本作は、井口の決め台詞とは裏腹に「人間、何が原因で死ぬのかわからねえ」といったメッセージも同時に発しているのだ。物語を深くするための仕掛けとして、この二重性は理解できる。問題は、それを強調するために、映画を通して「いい人」として描いてきたヒデオを最後に死亡させる、という発想がとても安易に感じられるということだ。
(文・ZAKKY)
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