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実話の方がやばすぎて怖い…実在の殺人事件がモデルの日本映画(3)無差別大量殺人…児童8人犠牲の最悪事件とは

text by 寺島武志

胸が張り裂ける感覚に陥る、重くて暗い「後味が悪い」映画。出演している役者に感情移入してしまうと、嫌悪感を抱くことも少なくはない。しかし、作品のモチーフとなった事件では、さらに残忍で恐ろしいものが数多く存在する。今回は、実話の方が怖い日本映画を5本、作品の魅力や俳優の迫力と共に、実際の事件も紹介する。(文・寺島武志)

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「後味の悪い」作品の代表格

『葛城事件』(2016)

三浦友和
三浦友和Getty images

上映時間:120分
監督・原案・脚本:赤堀雅秋
キャスト:三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈

【作品内容】

幸せな家庭を求めるがゆえに家族を不幸にしてしまう父・葛城清(三浦友和)と精神を病んでいく妻・信、リストラを機に孤立していく長男・保(新井浩文)、後に無差別殺傷事件を起こし死刑となる二男・稔(若葉竜也)の4人家族が辿る運命を描いている。

父親の金物屋を継ぎ、妻との間に2人の子どもも生まれ、マイホームも建てた清。理想の家庭のはずだったが、清は徐々に頑固で横暴な性格が顔をのぞかせ、カッとなると暴力を振るうようになる。

長男はリストラされたことを言い出せず、二男はアルバイトが長続きしない堪え性のなさを清に責められることで理不尽な思いを募らせるなど、次第に不穏な空気が流れ始める。

【注目ポイント】

映画監督デビュー作『その夜の侍』(2012)で高い評価を得た劇作家の赤堀雅秋が、自作の舞台を映画化。

本作のモチーフとなった事件は、2001年6月に起きた「附属池田小事件」だ。

15回もの逮捕歴があり、当事無職の引きこもりだった男が社会への憎悪を募らせ、名門の誉れ高い大阪教育大学附属池田小学校に出刃包丁を持って侵入。児童8人殺害、教職員2人を含む15人を負傷させるという犯罪史上稀に見る無差別大量殺人事件として、社会に衝撃を与えた。

犯人は取り調べで、犯行動機について「インテリの子どもを多く殺せば確実に死刑になると思った」などと供述。その異常性とともに、生い立ちや家庭環境も注目され、いかにしてこのような屈折した“モンスター”が生まれたのかが繰り返し報じられた。

実際、犯人は、父は酒浸りで暴力ざんまい、母はネグレクト、7歳歳上の兄は自殺と、想像を絶する悲惨な環境に置かれていた。

この事件が引き金となり、死刑目当ての無差別殺人事件が続き、2008年の秋葉原無差別殺傷事件や、2021年の京王線無差別襲撃事件など、いわゆる“誰でもよかった殺人”も頻発するようになる。

“望み通り”の死刑判決を受けた犯人は獄中でも、父に対し「宮崎勤の父のように自殺してほしかった」と語るほど、憎悪を隠そうともしなかった。ちなみに、映画『葛城事件』では、若葉竜也演じる犯人は、田中麗奈が演じた死刑反対を叫ぶ女性と、死刑執行を前に獄中結婚するが、これは池田小事件の犯人の実際のエピソードに基づいている。

実際の事件では、犯人が統合失調症で精神科の閉鎖病棟に入院した過去があったことで、精神障害者に対す偏見が進み、全国精神障害者家族会連合会(全家連)が、メディアに対して、安易に「精神病者は危険」といった偏った報道を控えるよう、声明を出した。

そのためか現在では、殺人や傷害事件を報じる際、加害者に精神障害がある可能性がある場合、第一報では実名を報道することを控えるケースが目立っている。

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