世紀の大爆死…最悪のヒーロー映画は? 迷走した失敗作(5)なぜそうなる…酷すぎる日本描写で崩壊したのは?
ヒーロー映画は老若男女に愛されるジャンルとして、人気の高いコンテンツだ。マーベルやDCコミックなど、人気のシリーズも数多く存在する中、大ヒットを目指すも、シリーズ最低興収や世間からの反感など、期待外れの結果となるものも少なくない。今回は、その中でも、大爆死と言われた史上最低のヒーロー映画を5本紹介する。(文・寺島武志)
————————————–
ステレオタイプの日本描写に批判の声も
『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)
上映時間:125分
原題:The Wolverine
製作国:アメリカ・イギリス
監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:マーク・ボンバック、スコット・フランク
キャスト:ヒュー・ジャックマン、福島リラ、真田広之、ウィル・ユン・リー、ファムケ・ヤンセン、ハル・ヤマノウチ、TAO、小川直也、角田信朗、スベトラーナ・コドチェンコワ、山村憲之介、イアン・マッケラン、パトリック・スチュワート
【作品内容】
ウルヴァリンは、かつて、長崎への原爆投下から命を守ったヤシダ(真田広之)に請われて、来日する。
実業家として成功していたものの、病魔によって死の淵にあるヤシダに「不老不死の苦しみから解放する」と告げられるウルヴァリン。ヤシダはほどなくして死去する。ヤシダの葬儀が執り行われるが、そこにいた僧侶たちには刺青が…。僧侶に化けたヤクザに襲われ、銃撃された上に、ヤシダの孫娘マリコ(TAO)を拉致されてしまう。
それはヤシダの後継者争いであり、巻き込まれる形となったウルヴァリンだが、不老不死の力を奪われたまま戦い続けることになる…。
【注目ポイント】
『X-MEN』シリーズの1つとして制作された本作。同シリーズに欠かせないヒュー・ジャックマンを主役に迎え、真田広之らの日本人キャストも登場し、長崎を皮切りに日本が舞台となり、本格的な日本ロケも敢行された。
ウルヴァリンと日本のヤクザが戦うアクションシーンは見どころがあったが、致命的だったのは、日本の描き方が、あまりにも前近代的で、その設定も破綻している。
ウルヴァリンが、原爆を投下された長崎で、マンホールの中にいたから助かったという、被爆地に対する尊厳を無視するストーリー、日本人の登場人物が韓国人俳優、お葬式会場は日本のお寺ではなく中国寺院。突然、アーチェリーを武器とする忍者が登場するハチャメチャさ。さらには、日本の法務大臣が若者で、ホテルで金髪の女2人と乱交パーティーに耽る始末だ。
日本のヤクザの描写も、何を見てこのようなキャラクター設定としたのか謎なほどの描き方だった。また、日本を代表するスターとして気を吐いている真田広之ですら、日本語のセリフ回しがなぜか片言で違和感アリアリで、もったいないという言葉しか出ない。
興行収入面でもアメリカで4,148億ドルと苦戦し、他のマーベル作品に比べて興収面で遅れをとる『X-MEN』シリーズの凋落に拍車をかけることになってしまった。
(文・寺島武志)
【関連記事】
世紀の大爆死…最悪のヒーロー映画は? 迷走した失敗作(1)
世紀の大爆死…最悪のヒーロー映画は? 迷走した失敗作(2)
世紀の大爆死…最悪のヒーロー映画は? 迷走した失敗作(全作品紹介)