棒読み演技がヤバい…批判浴びた最悪の大失敗「有名人声優」(2)ジブリも批判殺到…素人を起用した理由とは?
映画は様々な要素が絡み合って一本の作品になる。そのどれが欠けても成立しないのだ。しかし残念なことに、たった一つのミスで台無しになってしまう作品が存在する。中でも映画を形作る俳優や声優は、作品の良し悪しを大きく左右する。そこで今回は、芸能人が声優を務めて失敗した映画を5本セレクトして紹介する。(文・寺島武志)
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棒読みすぎて話が入ってこない…。
庵野秀明『風立ちぬ』(2013)
上映時間:126分
英題:The Wind Rises
製作国:日本
監督・原作・脚本:宮崎駿
キャスト:庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎
【作品内容】
大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気に襲われていた。そんな激しい時代に堀越二郎は、片田舎で少年時代を過ごしながらも、航空機の設計者になることを決意する。やがて、その夢を実現させ、彼は“ゼロ戦”を作り上げる…。
【注目ポイント】
宮崎駿が原作・脚本も兼ね『崖の上のポニョ』(2008)以来5年ぶりに監督を手がけた本作。
この作品をもって、一度は引退した宮崎。それを撤回して、再び監督作品を公開するのは10年後の『君たちはどう生きるか』(2023)まで待つことになる。
「引退作」と決心して製作したとあって、従来のジブリ作品とは趣が異なり、大正から昭和初期の日本を舞台とし、社会の閉塞感や震災、戦争といった重いテーマを描き、自身の人生観を多分に作品に投影している。宮崎は完成試写の際、「初めて自分の作った映画で泣いた」と語っているほどだ。
本作は国内興行収入120億円を記録し、評論家からは高く評価されたが、そのジブリらしくないストーリーに、ファンは困惑し、賛否両論を呼んだ。
特に賛否の「否」の部分がクローズアップされたのは、その声優陣だ。
主人公の堀越二郎の声を担当したのは、なんと庵野秀明。『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズなどで監督や脚本家としては言うまでもなく超一流の彼ではあったが、当然ながら、声優経験は乏しい。棒読みであるだけでなく、全く感情がこもっていないセリフ回しに厳しい声が上がる。
こうした批判が上がるのは、宮崎にとっても、プロデューサーの鈴木敏夫にとっても想定内だったはず。それでもなお起用に踏み切ったのは何故か。単なる“師弟関係”であったことだけが理由だったのか。
本作の主人公・堀越二郎は、その才能とは裏腹に、口数は少なくどこか不器用なキャラクター。宮崎はそのイメージと庵野の声が一致すると判断。庵野の語り口や素人っぽさが、二郎にマッチするという結論に達したのだ。
宮崎はインタビューの際、庵野の起用理由として、「庵野が現代で一番傷つきながら生きている感じを持っていて、それが声に出ているんで。角が丸くなったりギザギザしている。それがそのまま出てくれたからいいと思った」と語っている。
“現代で一番傷つきながら生きている”というコメントは、庵野が、アニメ版エヴァンゲリオン放送後、燃え尽き症候群のようになってしまい、併せて深刻な鬱を患い、自殺を図ろうとしたというエピソードから、その生き方が二郎と重なるという思いもあったのではないかと思われる。
逆に、二郎役にプロの声優を起用していたら、あまりにも上手すぎるセリフ回しのせいで、二郎のイメージとは合わなかったかもしれない。「棒読み」「下手くそ」と言われながらも、宮崎、そして鈴木の心の中では「成功」だったのだ。
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