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名作ぶち壊し…史上最低のリメイク日本映画(3)。違和感しかない…名画オマージュは不自然でちぐはぐな結果に

text by 寺島武志
左から蒼井優と妻夫木聡Getty Images

今回はリメイクされた最低の日本映画をセレクト。旧作をリスペクトしているのは分かるが、あまりにもお粗末過ぎる…。せっかく製作するなら、もう少し過去作に寄せるなりして欲しかった…。「名前だけ借りたかっただけでは?」と、ついつい小言を言いたくなってしまう作品群を紹介する。今回は第3回。(文・寺島武志)

●誰に向けて撮ったのか…。至極残念な小津のリメイク

『東京家族』(2013)

製作国:日本
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、平松恵美子
キャスト:橋爪功、吉行和子、‎西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優

【作品内容】

1953年、名匠・小津安二郎監督によって製作された『東京物語』をモチーフに、監督人生50年を迎えた山田洋次が監督・脚本を手掛け、2013に公開された作品が『東京家族』。設定やストーリー展開などの大部分を、『東京物語』を踏襲した上で、時代を現代に移し替えているものの、上京した年老いた両親とその家族たちの姿を通して、家族の絆、親と子、老いと死、人間の一生、それら全てを冷たい視線で描き、家族という共同体が年を経るとともにバラバラになっていく現実を、独特の雰囲気でつづっている物語だ。

両親役は笠智衆と東山千栄子から、橋爪功と吉行和子に代わり、妻夫木聡や蒼井優といった新進気鋭のキャストも起用し、舞台も尾道から瀬戸内海・芸予諸島の大崎上島町に移している。

【注目ポイント】

今や尾道は東京から新幹線で直行できることから、できるだけ東京からの“遠さ”を演出するための設定変更と思われ、リメイクするには遅すぎた感は否めない。

“小津作品へのオマージュ”を謳った作品であるが、再現性を求めるあまり、昭和を生きる人間と平成を生きる人間が混ぜこぜになっており、セリフ回しに不自然さがある上に、直前に起きた東日本大震災を無理やりストーリーに入れ込む設定には違和感しかない。

ちぐはぐな演出が影響をしたのか、興行収入は事前の予想を大きく下回る約18億円にとどまった。結果的には、ターゲッティングが小津作品の『東京物語』に親しむシニア層なのか、若い世代なのか、曖昧であったことが失敗の要因の一つと言えよう。

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