大爆死から一転、大絶賛! 公開当時大コケした名作日本映画(4)原作者の怒り買うも…歴史を変えた金字塔とは?
人々の心に残り続ける名作映画が、必ずしも評価されていたというわけではないことをご存じだろうか。今では名を知らぬ者はいない世界の巨匠・北野武や宮崎駿も、公開時に大コケしてしまった過去を持つ…。それも意外な作品でだ。そこで今回は、公開時は大コケしたものの後に絶賛された日本映画を5本セレクトして紹介する。(文・寺島武志)
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原作者・高橋留美子の怒りを買い苦戦
『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)
上映時間:98分
監督・脚本:押井守
原作:高橋留美子
キャスト(声優):古川登志夫、平野文、鷲尾真知子、藤岡琢也、神谷明、杉山佳寿子、島津冴子、田中真弓、千葉繁、村山明、野村信次、二又一成、緒方賢一、佐久間なつみ
【作品内容】
キュートな異星人・ラムと、超女好き高校生あたるが連日のように巻き込まれる、突拍子もない超常現象や奇妙な事件を描く、ハイパーテンションSFラブ・コメディアニメの劇場用作品第2弾。
あたるの通う友引高校は、本番を明日にひかえて文化祭の準備に大わらわ。だが翌日になっても、あたるたちは文化祭の準備をしていた。
しかし、不思議なことに、友引高校の生徒たちは本人たちは気付かないまま、同じ日を延々と繰り返していた。事態に気付いた担任の温泉マークと養護教諭・サクラは原因を究明しようとみんなを下校させるが、無事に家まで帰り着けたのは、あたるとラムだけ。
みんなは何度帰ろうとしても、友引高校に戻ってきてしまう。その間にも異変は起こり続け、財閥の御曹司・面堂終太郎が自家用ハリアーを持ち出して空から現状を確認すると、そこに見えた光景とは…?
【注目ポイント】
当時、少年マンガの世界では異色の存在だった女性作家の高橋留美子によるマンガを原作とし、アニメ版も人気を博した『うる星やつら』の劇場版第2弾。
前年に公開された1作目の『うる星やつら オンリー・ユー』(1983)に引き続き、アニメ版のチーフディレクターを務め、今や世界的なクリエイターとして知られる押井守が監督を務め、彼にとっては出世作にもなった作品だ。
原作者の高橋は、基本的に劇場版のシナリオに口出ししないスタンスを取っていたが、あまりにも原作マンガを改変した本作試写を観て愕然とし、「これは私の作品とは関係ない、押井さんの作品」というコメントを放つ。その後、「1作目は好きだが、2作目は今でも一番嫌い」とも語り、確執を感じさせたが、特に押井との関係が悪化したわけではなかったとも語っている。
しかし、押井が本作を最後に同シリーズの製作から外れたという事実が、全てを物語っているのではないだろうか。
正確な数字が残されているわけではないものの、興行収入面でも苦戦し、前作に及ばなかった本作。
しかし、タツノコプロ出身で、当時、新進気鋭のアニメ作家だった押井によって描かれた本作は、その幻想的な表現と時間を繰り返すモチーフなど、後のアニメ作品に大きな影響を与えるアイデアの宝庫。アニメ映画の歴史における金字塔的作品と評価する向きもある。
興行収入では苦戦したものの、ソフト化には成功し、当時のビデオの売り上げでは、マイケル・ジャクソンのミュージックビデオ『スリラー』や、スピルバーグ監督の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』、ジブリの『風の谷のナウシカ』に次ぐ数字を記録した。
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